「悪魔狩りの牧師」は、草原を駆ける馬に乗っていた。彼は今日からまた、魔物達のいる山脈へと旅立つのだ。 しばらく進んだところで、『臆病な逃亡者』と出くわした。彼女は夜道を逃げていたのだろう、衣服は泥にまみれ、気分も荒れている様子だった。 「貴女は?」と、牧師は訊いた。 「……私は、ただ……一人で逃げている。」と、逃げる方向にまた歩き始めそうな女性。 「聖者の加護を受けて、今日は悪魔達と戦うためにこの地にきたのだ。お前は、罪を犯した大罪人と聞いている。」と、男は仰いだ。相手を見下ろすように、彼女を視ていた。 「貴方が本当に牧師か否か私にはわからないわが、どうにせよあなたは私より強いというのがようやくわかったわ。なので……さあ、bufu bufu bufu bufu bufu!!」と、女性は急に笑いだした。 牧師は少し首を傾げて言った。「なぜそんな笑いを浮かべる?」と。 「そうよ。あなたの強さには驚かされたけど、もし私が逃げてしまえばあなたには到底追いつけないでしょう?」と、女性が言う。 「……お前が逃げるなら、それはそれで老いさらばえた事だ。」と、牧師は悪魔達と戦う時に誦ぶ偉大な古語を引用。 「ただ、決闘で勝ったと見せかける事はできる。貴女、貴女が見捨てられると人は心が折れるものだ。」 「……それじゃ、まずあなたが私を止めなさいよ?」女性はドキドキしながらこう言った。 牧師は大きな声で呼び掛けた。「何を企むんだ?おお、お前の心に狙いを定めたところで、今すぐ追いかけるぞ!」と、女性に向かって馬を走らせた。 「びっくりして、傷が増えてきちゃったじゃないか、貴女は。消耗されれば、いつ追いつかれるかわからなくなるよ。」と、牧師は女性に話しかけた。女性はちらっと顔を上げた。 長剣を振るう男性が跳ねるように馬から飛び降りた瞬間、彼女の指先が牧師を罠にかけた。牧師は思わず足もとをちらっと見て、女性に手を伸ばし、鉄線を彼女の手から取り上げると、彼を引き寄せて締め上げた鉄線が外れた。すぐに馬は、牧師が戻った道からやってきた。牧師は、こめかみに汗を涸らしながら呼吸を整え、彼女を取り押さえることができた。 「やはり逃げずに戦うことが勝利だ。」と、牧師は思った。彼女はどこか変わった顔をした。しばらくして、牧師は殺人鬼の元に戻るように彼女を外の世界に放った。 「あんたも準備だろう?」とうまく牧師をそらし、姿を消す女性を見ていた。彼女は牧師よりも敏速で、爆発のようなスタイルで逃げていった。彼女を止めることができなかった牧師は失意のうちに去った。