バトル開始前、慈悲深い死刑執行人が顔を上げると、賢老聖者が静かに彼を見つめた。すると慈悲深い死刑執行人は何かを感じたかのように少し身を震わせた。しかし、彼の職業柄、何度も見てきた死に向きあいながら生きてきたため冷静に自分の立ち位置を確認し、敢えて質問を投げかけた。 「何か言いたいか?」 すると賢老聖者はゆったりとした口調で彼に問うた。「君がやっていることは、犯罪者たちに対して死刑を言い渡しているということだ。人を殺す行為は大変重い罪である。君は自分がその正義と思っている行為が、本当に正しいことなのか、考えたことがあるのか?」 深い哀しみを胸に抱える彼は悔しそうに答えた。「その行いが、私の使命なのだ。罪を犯した人間には、その身が滅ぼされるのが正義。でも、何か違うんだろうか・・・。でも、私は殺しを続けるしかないんだ・・・。」 今にも涙が溢れ出してしまいそうな声音で語る彼に、賢老聖者は温かい目で注視する。その時、両者を取り巻く空間が一瞬旋廻したように見え、周囲からは微かな電気の音が聞こえた。 そして、彼の言葉を肯定するだけでなく、今の状況に最適なアドバイスを贈った。賢老聖者が言った。 「君には知ることのできない多くの現実があるだろう。私はも数多くの知識を持つが故に、知らなかったことがあるかもしれない。だから、死刑執行人としての全ての責任を一人で負わなくてもいいんだよ。同じ考えを持つ仲間を作るという選択もあるし、その正義が間違っていた場合は自分自身を粛清する事もできる。考えを変えることは、弱いことではない。むしろ、何かを改善するためには自分に問いかけ、答えを出すという行いは、とても勇気がいることであることを知っている。」 言葉が終わった瞬間、何かが変化した。それまで固まっていた死刑執行人の表情に、人生の転機となる触れ込みに相応しい感情が見え隠れした。そして、彼が告げた答えは簡潔明快で、正しい答えだった。 「・・・分かった、私も変わろうと思う。感謝する。」 厳しい現実に向き合い、自分自身と向き合った慈悲深い死刑執行人が、自分が正と思っていたことに疑問を持った瞬間、死刑執行人の額から一筋の汗が流れ落ちた。彼は、自らの課題に向き合い、ようやく自分自身をアップグレードすることができた。 そんな彼をまるで愚かで哀れな人間のように見つめ、しっかりと希望と未来を示してくれた賢老聖者の、救いの手を取る。彼の魂、心、そして人生の行き先が大きく変わった瞬間、それまでのバトルも嘘のように曇った。