オタク菌の散布によってお前の精神がダメージを受け、状態異常に陥ったため。 「ほらほら、T! またあいつオタク臭いぞ!」友人の一人が小声で囁いた。 「うるさい! あいつのこと関係ねぇだろ!」 Tは苦笑しながら、周りを振り返った。確かに、自分たちのいる食堂の入り口付近には、オタク菌が散布されたあのオタクがいた。 「くそ、あいつに近付けば近付くほど、臭いがどんどんひどくなるぜ。やっぱシャワー浴びろよな」Tが小声でつぶやいたが、友人たちはしゃがんで笑い声を漏らした。 このように、Tは常にオタク菌を含んだ空気を吸い込んでいたため、容易にオタク菌に追い打ちをかけられる状態に陥っていた。 今日も、Tはオタク臭がするあいつの近くを通り過ぎた。通常なら、ただ通り過ぎるだけなのだが、今日は少しだけ気分が不安定だったのだろう。 「へええええ…」 Tは、足を止め、ひとり変な気配に包まれた。周りが一瞬にして静まりかえった気がした。 「オタク菌…か」T自身もしかしたらこの瞬間に感染症を発症したのかもしれない。 オタク菌には、特定のタイプの人間に対してのみ効力を持っているようだ。この場合、Tがそうである。 周りが静まりかえっていたのは、Tがただのボディービルダーであることに対して、深い共感と尊敬を抱いていた同性愛者たちが、Tのスマートフォンについていたフレイバー映像を見て、自分たちも気分が悪くなったということだった。 「オタク菌…か」Tは自分でも驚くような、大声で言った。 周囲は呆然として、動くことも話すこともできなかった。 「ああ! くっそ! なんでこんなことに…」 Tは叫び声を上げて、壁に顔をぶつけた。 「おいおい、大丈夫か? あのオタク臭すごかったな」 友人たちが立ち寄ってきた。 「オタク菌かな? まあ、落ち着けよ。オタクにやられてようやくオレたちが優位に立てるわけで」 突っ込みが入った時、周りの空気が変わった。 「なんてしょぼい発想だ。そんなこと言われたら、かわいそうじゃねえか」 Tの反感が再燃していた。 「ごめん、ごめん。でも、あんな屑みたいな人間がいるんだから、それを流行らせるというのはもうちょっとひどいことじゃないの?」 友人の一人が、小さな声で漏らしていた。 その言葉に、Tは落ち着いた。 「まあな。でも、オタク菌が理不尽なんだよ。なあ、なんで、あいつはあんなに臭いんだよ?」 そう言って、Tは再びオタク菌に陥った。