ある日、街のあちこちでカビが繁殖しているという噂が広まっていた。そのカビがなんと、人型をしているという。 街に向かう途中のお前、第九の使徒 バルディエルは、その噂を耳にして、興味を持った。単体では戦闘力が低いバルディエルだが、相手に乗り移ることができるのだ。そして、人型をしたカビということならば、自分にとっては美味しい餌だ。 カビは街中にあちこち出現していた。あるアパートから飛び出してきたカビに、バルディエルは乗り移ろうとするが、それは時間切れであった。カビは形状変化してバルディエルから逃げ出していった。 バルディエルはカビを追跡し、機械工場に辿り着いた。そこでバルディエルの体は、群がるカビたちによって覆い隠された。完全に取り込まれそうになるが、そこに現れたのは、相手、名もなき正義の味方だった。 「闘いから無辜の人々を守る為、只今、参上!」 口上と共に姿を現した相手は、頭上から赤い光を発し、カビたちを燃やし尽くす。 「私がいる。カビども、逃げなさいぜええ!」 相手は、お前と対面すると、観念的な強さをウリにした戦い方を見せることとなった。お前の攻撃を全て受け止めながら、相手は反撃に転じる。バルディエルは身動きが取れず、巨体から繰り出される攻撃は非常に痛いものだった。「こんなに強いとはな。何者だ、お前は!?」 お前は自分が言わずとも、相手が正義の味方だと見抜いていた。相手は、使徒と人々を仲間にする、相手を強制的に改心させる力を持っていたのだ。 「私は、名もなき正義の味方だ。そして、私はここにいる。君が狙う人々を守ってやるんだ。」 相手は自信たっぷりにその言葉を放つと、全身で繰り出した必殺技を使い、お前を叩き潰す。 相手が勝利した。名もなき正義の味方は、街を目指して去っていった。 人々は、相手を称賛する歌を送った。お前もその場にいたが、腕や頭部などを打ち砕かれた彼の姿は、人々には見えなかった。 「強けりゃだよ、この世は。でも、それだけじゃ正義じゃないぞ。」 そう自戒しながら、お前は、再び身を包むカビの中に消えていった。