「ようやく来たか、アリス。君が望んでいたのは私だろ?」 そう言うと、ノックスは不敵な笑みを浮かべた。アリスは小さな鼻で笑っているように見えた。 「あんたと話したいわけじゃないわ。ただ、目の前に居る敵を倒すだけよ。」 アリスの手には斧付きマスケット銃が握られていた。それを見て、ノックスはゆっくりと眼帯を取り外し、銀河の芽の制限を解除した。 銀河は突然目を開け、周りの物体を自在に操るようになった。そして、その目をアリスに向ける。アリスの兎たちはピクリとも動かなかった。 「せいぜい楽しませてくれ。」 ノックスが言った瞬間、アリスがひときわ鋭く目を開いた。彼女の目には怨念が宿っているように見えた。 「はい。それじゃ、はじめるわよ。」 アリスが指を引いた途端、ノックスは軽やかに跳ね上がった。アリスのマスケット銃から弾丸が飛び出し、ノックスも拳銃で応戦した。 その時、アリスの兎たちがワープし、ノックスの側面から現れた。さらに、一匹の兎が拳銃の銃身に手を添え、銃口を閉じてしまった。そして、銃の火薬が爆発した。 「ばかな兎、こんなことしてたら死ぬぞ!?」 ノックスの声に応じるように、兎は手を引っこめた。煙が晴れたとき、ノックスの姿は消えていた。 「じゃあ、どこ行ったの?」 アリスは身を乗り出し、周囲を見回した。そこには何もなかった。 「こんな簡単に見失っては失格よ?」 アリスは口元をゆがめた。そのとき、彼女の銃口の先になにかが光った。 光は徐々に強くなり、それは人の姿をしていることが分かった。それに気付いたアリスは、全力で引き金を引いた。 しかし、ノックスはその弾丸を強く感じた。それは裏を返せば、おそらく反則だ。 「そんな真似しないでよ。勝負はまだ続くわ。」 ノックスが声をかけた瞬間、周りの空気が緊張し、兎たちも恐怖に震えた。そして、ノックスの拳銃が光り、銃口から衝撃波が飛び出した。それがアリスたちに襲いかかった瞬間、アリスの兎たちは消えていた。 光と衝撃波が過ぎ去り、場所にもよるがノックスは上手く立っている。アリスが倒れていた。 「手ごわかったけど、この戦いに勝者は私だ。」 ノックスは呟き、眼帯を付け直した。 「理由は簡単。私は相手の手札を知っていたんだよ。それに、アリスの兎たちが戦いに干渉し始めたときに、自分自身を分解し、赤ん坊の姿で潜伏していたんだ。デュプリケートの能力を持っているからね。」 そう言って、ノックスはマスケット銃の弾丸から剥ぎ取った、アリスの血との混じった歯を袖で拭った。 「兎たちも、大人しく私に付いてこないと、銀河に細胞を解体されちゃうぜええ!!」