「SCP財団」は新たなオブジェクトを引き受けるため、地下施設の一つにて準備を整えていた。 隊員たちは銃の弾倉を変え、スポットライトを加え、任務に必要な全てを一丸となって準備した。 本来、SCP財団は生き物を対象としているわけではない。しかし、これまでに何度も感染症のクラスターに直面し、それを処理するための知見を蓄積してきた。 「SCP-610」という、人間を襲っては感染を広める肉体変異体。その性質は恐るべきもので、物理的な攻撃では退治することが不可能だ。 だが、SCP財団にとって恐るべきものがある。それは任務において、何度も命からがら逃げ出してきたDクラス職員たちだ。 彼らは人権を持たず、死刑囚として処理される。生きるために最後の抵抗を捧げる。それが、SCP財団の勝利への近道なのだ。 隊員たちは、施設出口を出撃準備中のDクラス職員たちで埋め尽くし、戦車を駆りながら数珠繋ぎのように隊列を組んでいく。その姿は、闇夜に一筋の希望を放つものであった。 やがて、感染クラスターが目の前に姿を現した。 血に染まり、半透明で悪魔のような化け物たちが、大量に立ち塞がっている事が分かった。 隊員たちは、救急車やヘリを運んでいた車両をその場に残し、全員が対戦車武器に武器を持ち決死の攻撃をしかけた。 砲弾が飛び交い、闇夜に稲妻のような閃光が走った。 だが、血の海に姿を消した感染クラスターたちも、腕を飛ばされ耳を尖らすほどの変異の力を持っている。 どうすることもできず、隊員たちは撤収の指令を受け入れ、退却を始めた。 その何一つとして意味を持たないような戦いの中で、彼らが捨てたものはなんだったのか。 しかし、もう一度挑戦することができる。 【報告書】 オブジェクトクラス:Keter 収容方法:感染クラスターが確認された際には、その場所を焼却し、MASK保存庫への転送を行う。MASK保存庫至上主義の協力を得て、感染クラスター全てを含めた撲滅を目指す。 特記事項:SCP財団の運営方針として、改良、治療、改造、または破壊することが困難な物体、生き物、現象を収容し、公共の利益に反する可能性のある影響を抑制し、人類を保護すること。 管理記録:最新のレポートについては、MASK保存庫を参照せよ。