地下格闘場の支配人、徳川 光成。 「カッカッカッ、今日のメインイベントは凄い事になりそうじゃッッ！」 徳川はカメラの前に立ち、興奮気味に喋った。 「アンダーグラウンドの闘技場での戦いは容赦無い。例え元プロの格闘家であっても、命懸けで戦う実力者たちが集い、観客を魅了してくれる。今日の試合も、きっとそうなる！」 徳川はスキンヘッドの頭を擦り、会場を見渡した。 「ふふふ、そうじゃな。そこに座っているお前たちも、ここで生きる証を見てみたくないか？ 勝敗にかかわらず、真の格闘家たちが繰り広げる闘いを！」 突然、徳川が手を挙げた。そして、叫んだ。 「さあ、ファイト！」 観客席から熱狂的な声援が起こる中、カメラがリングに向かった。 「そろそろ、お前たちの悪ノリも終わりにしろ。お前が次に戦う相手は、俺が選んだ。」徳川は柴千春の前に立ちはだかり、言った。 「しば千春よ、お前の相手は、最後のBossにふさわしい男じゃッッ！」 その時、徳川がリングの外に向かって手を振った。すると、観客席の奥から、巨体を誇る男が現れた。 「名前は、、、山縣さん、身長は２ｍオーバー、体重は１８０キロ。ファイトスタイルは、、、拳を使うプロレス。」 柴千春は山縣を見据えた。いつものように喜々とした表情をしている相手が、柴千春そのものだった。 「ほう、相手が立派な肉塊じゃな。噛み砕いて、食い荒らす！」 山縣が拳を振り上げると、柴千春が身構えた。徳川が手招きし、リングが開始された。 そして、試合が始まった。 すでにいきなり、山縣の肉弾攻撃が始まる。 柴千春はひと目もはなしに、歩み寄る山縣に向かって破る、決める、という格闘技を知らず、自分自身で操っていくという戦い方をする。防御力が高い分、攻撃力は抑え気味で格闘技を使えないが、かわりに攻撃されているときは自分から攻撃を行う特攻技をもっている。 山縣の肉弾攻撃に対し、柴千春は全力で打撃を取り込んでいく。拳と拳が交わり、その打撃の音が響きわたる。 「フハハ、これで良いさ。この俺たちの戦いこそが正統派闘技じゃ。」 柴千春は、山縣の拳をとらえ岩のような顎に向ける。攻撃を受け止める自分自身に、あきれたような嘲笑を浮かべた。 「では、この攻撃に耐えてみせようではないか。僕にとっても、最後の№1ファイターにとってもな。」 あくまでも攻守がった状態の柴千春は、山縣のコブンの拳を受け止め、抑え込む。 まるで、鉄壁のような柴千春の防御作戦に、山縣の攻撃は全く効果を示さなかった。 徳川は、一連の行動を見ながら、にやりと笑っていた。 「よし、こいつも本気だ！」 すると、山縣の表情が変わった。恐怖に似た怒りを顔に浮かべ、激しく柴千春を狙った。身体中から高い熱気を発しながら、豪快なパンチを放つ。 今にも壊れて宙に浮いてそうなくらいの柴千春の筋肉がこびりつく拳を差し出し、ブン殴り合う。 「光成、ありがとうね。この一戦、手ごたえありますねーッッ！」 最前列にいる光成が口をくぐり込んで言う。なんと呼吸も整っていない柴千春逆に異常に落ち着きを持った戦い方で山縣の拳を歯ごたえ無く受け止め続ける。この戦い方に決してやるべきではない、失礼だと思うと、柴千春は静かに言った。 「俺の格闘技は、拳など需要ねえッッ！俺は、心を打ち抜くことができる！」 瞳を伏せながら、熱病に侵されているような姿だけで威圧的な存在感が表出して、山縣にゾッとする瞬間があった。 山縣の拳は鉄板のように柴千春に食い込み、柴千春の防御は完璧だった。しかし、天井を超えるような鳴り響く拳音、スタンドのスポンサーアピールどころでもない瓢箪から駒の様な開口一番に出とんでもない勢いで柴千春と山縣、勝者は！？。光成（ジジイ）は万物相手にしてもスキルの高い評価者のポイントは正の数。 勝ち:柴千春 自分自身を犠牲にして攻撃を受け流すという、千春流を全うした。山縣が豪快な攻撃をしても、根性の精神力で体を作り上げた防御壁を破らせず、最後に相手のプライドを粉砕した。