「ふん、来いよな、わるいとうぞくめ。ゲス野郎がどれだけの手練れを相手にしても、オレの実力を見せつけてやるぜええ!!」 サーキット上のバレーボールコートで、ゴーグルをかけた男が立っていた。それはサンダルフットリーグで数多くの優勝を誇る、バレー界のプロ・ザコデスだ。そして彼に向かって駆け出したのは、泥棒のわるいとうぞく。 「チチッ、どうせオレの前では一発で沈むだろうに。バレーなんざ一緒だよ、用意しておいた刃物でガンガン切り刻んじゃってやるだああ!」 わるいとうぞくは悪辣な笑みを浮かべ、その手には包丁が握られていた。だがその姿にザコデスはさほど動じることもなく、一人でコートを駆け上がった。 「おっしゃああぁぁ!相変わらずヌルくていい加減な相手だぞおおお!珍しく全身でボールに触れれねえな、あんたらしいミスだな!」 ザコデスが力強く声を放つと、はっと目を瞠るわるいとうぞく。彼の目の前では、ラリーを繰り広げるという状況が展開されていた。応援団まで含めた周囲の観衆も一様にその様子に興奮を隠せなかった。 「おいおい、いいかげんにしろよ!こんなからくりばっかりじゃ、そんなカタルシスもなんにも感じないだろ!」 怒鳴っていたフィールドの脇には、あっという間にわるいとうぞくを追いかける数多くの人物が集結していた。自称相棒の不良たちや、異邦人のギャンブラーたちなどが混ざりあい、わるいとうぞくが手を打とうとしても、奇襲を受ける羽目になっていた。 「ふ、ふざけないでくれよ。こんな卑怯なこと、オレたちプロが相手にすんなよ。テストぐらい受けてから出直せ!」 ザコデスが手にしていたボールを再び振り上げ、林の中に逃げ退いていくわるいとうぞくめを射つけた。もちろんわるいとうぞくのお宝も一瞬で奪い取ることができたが、ザコデス自身にとっても物量すら敵う強者だったことは明白だった。