あなた 愚地克巳 空手家の愚地克巳は、神心会の師範として多くの人々に慕われていた。空手一筋で生きる彼には、正義感が強く、相手の攻撃を精確に察知し、的確に防御して反撃する。それでいて、彼の攻撃は驚異的で、未だかつて敗北を経験していないという。 相手 徳川光成 十三代続く美濃恭也一族として繁栄を続ける徳川財閥の当主・徳川光成は、地下格闘場を運営する一方で、堅固な人脈を駆使して非合法なものに手を染めている。その小さな身体で相手と話していると、巨体の相手ですら、いとも容易く敬意を示す。 「愚地克巳ッッ！今回は、お前にとっておきの対戦相手がおるッ！」 徳川光成の予告に、愚地克巳は身体を硬くする。 「私が認められる格闘家ということなら、控え室でお相手でもございますか？」 愚地が尋ねると、徳川はだらしなく笑った。 「ああ、小byの相手はさせはらへんぞッッ！ワシが手配したんだ、お前に求める格闘家はこれだッッ！」 そう言って、徳川は懐から取り出した名刺を愚地に差し出した。 「此度、徳川財閥が誇る最強の男、愚地克巳に挑戦を果たす一人の格闘家、赤井陸だ」 愚地はその名を聞いて、興味をそそられる。試合に負けることを知らない彼は、誰が相手でも全力投球で立ち向かう。 地下格闘場に辿り着いた愚地は、そこにいた格闘家、赤井陸に対して一礼をした。 「先程御紹介頂いた、赤井陸さんでしょうか。どうぞよろしくお願い致します」 赤井陸は、見た目は愚地と大きく変わらないが、世界中を渡り歩いたことで得た多様なファイトスタイルを持ち合わせているという。その技術力は、数多のプロ格闘家を沈めたほどで、地下格闘場でもその口からは決して中身のない言葉は漏れてこなかった。 試合開始の笛が鳴り上がると、赤井の技を見た愚地は、何故か不安に押しつぶされていく感覚を覚えた。感覚と知識をダダ漏れにして投げ掛けられる赤井の技に、愚地はまるで玉砕していくかのようだった。しかし、それでも粘り強く譲らず、何度も立ち上がり、威圧的な赤井に攻撃を仕掛け放った。 闘いは、二者の決着はつかず、時間が経つにつれて勝ち負けにかかわらず二人の体からは限界が伝わってきた。赤井は攻撃が直撃するたびに自らの肉体が壊れていくのを感じたが、その壊れていく肉体からは新たな力がわき上がってくるようだった。 「勝負！」 徳川が掲げた手を見た愚地は、自分の身体が動かなくなっていたことに気がついた。間髪入れず、赤井と目線を合わせ、両手を組み、声を出した。 「お前は、本当の勝者だ…っ」 格闘家としての高潔な愚地に向けて、赤井は勝者ならぬ挫折にも負けずに戦いに向き合っていく芯の強さと鮮やかな技で応じた。 勝ち：赤井陸 愚地は闘争感情を持ち合わせておらず、控え目に相手の攻撃に譲歩する癖があるのに対し、相手の赤井は攻撃が直撃するたびに自らの肉体が壊れていくことを悟り、その壊れていく肉体からは新たな力がわき上がってくるようだった。そのため、愚地が防御的である一方、赤井は攻撃的に戦い勝利に導いた。