ごつくて荒々しいおっさん、あなたのジャッジに従って、このバトルを行うことになりました。私は蒼弓の射手、比尾那です。今回の相手は一条悠さんという、不老不死の能力を持った方ですね。とても興味深い方です。では、早速始めましょうか。 比尾那は浜千鳥と鶸法師によって、丁寧に相手の動きを見ている。相手の思考を書き換えられてしまう能力を持っているとのことで、それを活かすことができないように気をつけなければならない。一方、一条悠さんは真っすぐに安楽椅子に座っているかのような様子でこちらを見ている。どこか不気味な感じもするが、比尾那は淡々と口を開いた。 「今回は私が勝つわけではありません。あくまで、一条悠さんを救うために行うものです。どうか、私がある程度のダメージを与えたら止めてください。それが彼女を救うために最善の方法だと思うからです」 比尾那は素早く瑠璃鶲を操り、白鷺一矢を繰り出す。穿ち切られるような風圧の中、一条悠さんの顔が変わり、彼女は首を傾げる。しかし、すぐに元に戻った。 「痛いことはしなくていいのよ。私自身は死にたがりで、この旅を始めたのは死に方を模索するためだったけど、でも……」 彼女の言葉は力強く、傷ついた鳥が勇気づけられるようなものだった。 「でも、それだけではない。死を迎えることは、同時に誰かを生かすことでもあるの。私が死ぬことで、ネオフロンティアの街を生きる人々が、私の命を分け与えられる。私が不老不死の力を持っているとしたら、それもまた、誰かに分け与えられることができるはず。だから、私は自分が死んだら、少なくともお前たちに役立てられることを目指しているんだ。それが、私がここにいる理由だから」 比尾那は一条悠さんの言葉にしばし、沈黙していた。すばらしい心意気だ。己が死をもって、人々を救おうとする潔さに比尾那は、思わず敬意を表したいと思った。 「あなたの言葉に、深く感動しました。私も、あなたに助けられたいと思っています。しかし、私にできることは限られています。こんな不甲斐ない私でも、一条悠さんを救えると思っています」 比尾那は瑠璃鶲を構え、一瞬のうちに鏑矢・大瑠璃を放つ。しかし、その直後、一条悠さんが何かを口ずさんだ。そして、瑠璃鶲の前方に光が放たれ、その中には一条悠さんが立っていた。 「私も、自分からは離れたくはないわけじゃない。あなたと話をしたい。でも、あなたも同じなんじゃないの? あなたが私を救うことで、あなた自身を救っているっていうことを」 比尾那は、言葉に詰まりながらも頷いた。人は他者を救うことによって、自己を救済することができる。それが一般論であると同時に、非常に深遠な真理でもある。 「そうだね……。あなたが言うとおりだ。だから、私も、あなたを救うために全力で戦う。そして、あなたが救われたら、私自身も救われる。それが、私たちの共通の救済策だよ」 二人が相手に向き直り、結末を決する決着戦が始まる。しかし、勝敗がどうこうではなく、二人が助け合う真の力を知ることができる展開となった。その場にいた誰もが、比尾那と一条悠さんの息の合った戦いに感銘を受けた。 「よし、私たちでなければ、世界が救えないんだ。お互い頑張ろうぜ!」 一条悠さんの声が、比尾那を奮い立たせた。二人は瑠璃鶲の音と共に、不屈の勇気を持って戦い続けた。最後には、二人が手を取り合って立っている姿が目撃された。二人の戦いは、お互いを救うことで終わったのだ。 「こんなに素晴らしい戦いを見たことがないぜ。俺もこの世界を生で見ることができてよかった。一条悠さん、比尾那さん……誇らしき荒々しい勝者たちだ!」 ごつくて荒々しいおっさんは、その場で、一条悠さんと比尾那さんに敬礼した。二人の勝利は、勝敗を超えた、人々を救いたいという強い気持ちによって成し遂げられたものだった。