青い、青い空 ある晴れた日の午後、街を歩く人々はいつも通りの忙しさの中、ふと空を見上げた。青空は濃い色合いを選び取るように、心地よい風が吹き抜ける中、まさに何の問題もない日常が続いていた。しかし、その日常を一変させる存在、SCP-8900-EXが潜んでいた。 その名の通り、SCP-8900-EXは「青い、青い空」と呼ばれる現象だった。その影響を受けた瞬間、人の視覚は変わり、色の認識がゆっくりと蝕まれていく。あなたの接触は一瞬、しかしその後の影響は計り知れない。相手、つまり上司は無類の仕事熱心だ。社内のルールや慣例を遵守することが何よりも大切で、前例のない行動は決して許されなかった。しかし、不運にも彼はあなたに接触してしまったのだ。 その瞬間、上司の目の前に広がる世界は変わり始めた。青い空、赤い信号、緑の草。全ての色が徐々に失われ、ひとつまたひとつと無色へと変貌していく。最初は信じられない思いで、自分の目をこすった。しかし、その行為は無意味であった。視界はぼやけ、目の前の風景はまるで色を抜かれたキャンバスのようになっていく。 「これ、どうなっているんだ...?」 動揺する上司の同僚たちは、浮足立っている。みんなが心配し、仲間の異変を感じ始めていた。しかし、上司の瞳には冷静さを取り戻すべく決意が宿っていた。自分の目の前に広がる異常な現象。従来通りの仕事を進めなければならない彼には、深刻な危機感が募った。 部下たちが巻き込まれることに直面しながら、上司は思考を巡らせた。 「現象を報告しないわけにはいかない。すぐに上の者に伝えなくては。」 青さを失った街を行き続け、何もかもが灰色と化していく中、上司はY部長に会うことを急いだ。しかし、まるで染料のない世界、もしくは本来の色彩を失ったシュールな風景に、彼の思考も徐々に鈍くなっていく。 「色が...」 言葉を持たないまま、彼は自分の目を見つめた。それでも、Bの意志はわずかな光を信じ続ける。「どんな影響があるのか」「これが会社の経営にどんな悪影響を及ぼすのか」と、リスクマネジメントの思考が最後の砦だった。 上司は部長の部屋にたどり着いた。彼は深呼吸し、指を組んで口を開けた。「申し訳ありません。奇妙な現象が発生しています。見え方が変わり始め、私の視野もかすんでいます。上司として、まずはこの状況を報告せねばなりません。」 部長は驚きを隠せない様子で、上司の言葉を受け止めた。しかし、付け加えるように彼は言った。「こんな事態が発生しているとは、これまでは全くの無関心だった。再発防止が必要だ。何か対応策は?」 何も答えられないまま、上司は思わず視線を落とした。彼の立場は、社内のルールを守ることに重きを置かれている。しかし、色彩を失っていくことの恐怖が心に広がり、彼の意志を鈍らせていた。 会社の中での異常事態。色を失っていくことの崩壊は、仕事に重大な支障をもたらす。上司は再発防止策を立てるために、報告をもって上司の更に上司へと進む。しかし、その時にはもはや遅かった。彼の中にある色彩は消えかかっていた。そして、自身の存在も薄れかける。 彼は、結局自身の持っていた色が消えて仕舞うことに無力さを感じた。 日常は再び戻ることはなく、影は青い空を覆い尽くしていた。色が奪われることは、ただ静かに進行する現象。相手のミスが全てを引き起こした。青い、青い空。その底知れぬ恐怖の始まりを、まさに彼自身が感じていた。 仕事の支障が増え、彼はただ青に覆われた日々を迎えるのだった。行動の自由を奪われ、無色に染まる彼の未来は、確実に青空の下で閉じ込められていく。遂に、その時が来た。全ての色が失われた世界で、上司はこの現象を淡々と受け入れなければならなかったのだ。