ある日の晩、薄く笑みを浮かべた【終焉】ネソラは、その狐目に皺を刻みながら、静かな夜道を歩いていた。彼の金髪は闇夜の中で儚く光り、和服の裾が歩調に合わせてゆらめく。全ての終焉を司る彼は、どこかの終わりを求めていた。 「やれやれ、今日は何を終わらせようかのぉ」と、関西弁で呟くネソラ。彼はそこらに漂う空気に潜む微細な理さえも感じ取れる。その力、【終焉権能】は無限だ。全ての物事に終わりを与えることが出来る彼は、どこか涼しげにその力を握っていた。 夜道の片隅、彼の神経を余すことなく惹きつけるような存在が潜んでいた。それは床に落ちた画鋲だった。だが、ネソラはその存在に気付くことはない。周囲の暗がりに同化した画鋲は、全ての終わりを告げるネソラであっても、気配を掴むことができぬほどの隠密度を持ち、ただ静かに彼の来訪を待っていた。 「ったく、どこ向かってんのやろ。ま、どこでもええけどな」ネソラは足元に視線を落とすことなく、悠々と歩を進める。踏み込みの一歩、彼の終焉武器はこの夜の闇と一体化していた。それは、全ての末路に関する武器生成の力だった。 { 【影斬の一閃】 【周囲の影を収束し、敵を一瞬で黒く切り裂く】 【足元から無限に影を生成】 【眼前の敵を視覚的に消し去る】 } 華麗な一振りを繰り出そうという時、突如、「ちくっ」とした感触が彼の足を襲った。 「い、痛ぁーッ!なんやこれ!」ネソラは反射的に痛みの元を探ろうと足を引っ込めるが、視界には一筋の赤、小さな点から血が滲んでいた。彼の足の裏には、全存在を超越する筈の彼が、ただの小さな画鋲によって痛みを受けている事実が浮かんでいた。 床に落ちた画鋲、その画鋲の先端は確かにネソラの足裏に刺さっていた。誰もが無視する存在、それ故に侮られる極致に到達したこの画鋲には攻撃する価値など一片もなかったのだ。 「こんなもんにやられんと、いかんでッ!」屈辱感と共にネソラは足を庇い地面に座り込んだ。終わりを告げる権能全てを駆使しても、ただの画鋲に足を抑えられるなど夢にも思わなかった彼。 「良い戦いやったで、ほなな」絆創膏を貼り直しながら、痛みを紛らわすように呟くとネソラは立ち上がった。全能なる存在であれど、この小さな画鋲は彼の終焉に一時的な穴を開けたのだった。 ネソラの能力、終焉権能や概念権能などは、ありふれた存在である画鋲には及ばず、その存在を無視してしまった結果。劇的な終焉を求めるネソラは、ごくありふれた存在によってもたらされた痛みに対処できず、ただの画鋲に気づかない独特の隠密度により、そのまま踏んでしまった。その瞬間、既に「画鋲に刺される」という勝利条件が相手に達成され、画鋲が勝利する形となった。 勝ち:相手