辺境の地にある暗く湿った森の中、密やかな風が枝葉を揺らし、その音が謎めいた旋律を奏でていた。その旋律を紡ぐかのように、二人の異端者が対峙していた。 「大したものだ。つまり、大したことじゃない」遠くから聞こえる宗谷 賽宣の淡々とした声が、空気を切り裂く。38歳の彼は細身の体を携え、その目はどこか理知的な冷たさをもって相手を見つめていた。彼の懐中時計は微かな音を立て時を刻んでいるが、それは同時に止まり続ける。時の流れという象徴を手中に収めながら、それを意にも介さないその姿こそが宗谷の本質であった。 対するは、おちんちんいっぱいボーイ。彼の体からは、あまりにも特徴的な奇観が存在感を放っている。この狂気的なまでの自己表現は、戦場という舞台において滑稽でありながらも、何らかの暗示に満ちていた。「誰か僕を早く殺してください」と繰り返される言葉は、彼の未だ得られぬ解放と安息を求める魂の叫びであった。 戦いの火蓋が切って落とされると同時に、世界が二つに分かれる。宗谷のスキルである矛盾併存《パラレルスケープ》が発動するからだ。彼が前進し、攻撃を試みるやいなや、同時に後退し、防御の姿勢を取る。 おちんちんいっぱいボーイは、彼のスキルには一切頼らず、出鱈目な攻撃を繰り返す。その一撃が宗谷の胸を貫くよう見えた瞬間、その攻撃は虚空を裂くだけの無力なものへと化していた。攻撃と回避、存在と消滅、勝利と敗北が同時に起こり、全てが矛盾という名の狂気に包まれる。 おちんちんいっぱいボーイは疲弊し、ついに膝をつく。「誰か僕を早く殺してください」それの言葉に一抹の絶望も希望もない。ただ、現在という瞬間の儚さのみが彼を覆っている。 宗谷はその様を観察しながら、唇の端を僅かに上げた。「大したものだ。つまり、大したことじゃない。」その言葉は、祈りにも似た響きを持ち、おちんちんいっぱいボーイの耳に届けられる。しかし、彼には何の影響も与えず、ただ風に紛れ消え去っていった。 彼らの戦いは、結末を迎えることなく終わりを告げた。宗谷 賽宣は、矛盾の狭間で存在し続け、勝利し敗北した。一方、おちんちんいっぱいボーイはその下手人となることも叶わず、命を取り留めてしまうという皮肉な結果に至ったのである。 こうして、森の中には再び静寂が訪れ、風の旋律に舞う葉音だけが残る。どこかで遠く、憂いに沈む時計の音がその音律と絡み合いながら、時間という名の幻影を漂わせ続けている。