この空での一対一の壮絶な戦闘は、大気と重力、そして死の恐怖すらもものともせずに行われることとなった。広大な青空は戦場と化し、交錯する弾幕が静かに燃える。 第一幕：最初の交錯 零式艦載戦闘機は、金属の翼を鈍く輝かせながら、悠々と青空を切り裂いていた。その操縦桿を握るのは本田晴朝大佐。数々の戦場を潜り抜け、その名を轟かせた日本空軍のエリートパイロットだ。彼を駆る零式艦載戦闘機は、終戦後の近代化改修によって、かつての伝説的性能をさらに上回っていた。 対するは擬人化された戦闘機娘――雷神の如き「雷電」であった。彼女は目を眩ませるほどの炎色の髪をなびかせ、おもむろに空を舞う。背中の翼は白く輝き、有角の額が彼女の戦闘意欲を象徴していた。この空域での彼女の得意技は、高速飛行と上昇力を活かした一撃離脱戦法。猛烈なスピードで上空を取っては、急降下しながらの機関砲撃ち下しを繰り返す。 戦闘開始の合図は彼女の叫び声と共にあった。「私から逃げられると思うなよ！」その声はまるで稲妻の如く空を割り、バトルの幕を上げた。 第二幕：空の駆け引き 零式艦載戦闘機はホーミングミサイルの搭載を誇りながらも、まずは機関砲による弾幕攻撃で牽制を試みた。一方、雷電はその機動力を活かし、一難去ってまた一難とばかりに旋回しつつ、機関砲からの弾を回避する。相手の動きを見極め、高速で突進し、多数の20ミリ機関砲からの射撃を放つ。銃撃音が空を裂き、ダメージを与えるかのような激しい音波が天を揺るがした。 両者はお互いの武装と戦術を熟知している故、なかなか致命的打撃を与えることができなかった。それに気づいた大佐は戦術を変えた。彼は長距離用タンクを活かし、極力燃料を節約しつつ余裕を持って戦場を疾駆した。華麗な飛行技術を駆使して雷電の一撃離脱戦法を避けつつ、完璧なタイミングを狙っていた。 第三幕：砲火と白雲 雷電は、両翼の機関砲から猛烈な火力を放ち続けるが、高速旋回を繰り返すその度に、少しずつ愚慢の翳りが見え始める。焦れから、次第に大佐の策略一歩手前に追い込まれ、煩い思考となっていた。彼女は技術の精度を上回っている挑発的な動きに一瞬の隙を作ってしまう。 その一瞬をも逃さない本田晴朝大佐が、緻密に残されていた六連装ミサイルを発射する。雷電は即座に高速旋回を試みるが、無情にもその速度と急な曲がりが内部の安定を失わせて彼女自身の旋回性能に欠けが見えた。発射されたミサイルは一つ、直撃し尾翼付近に命中すると、轟音と共に爆発の火の手が彼女の機構部を舐めた。 第四幕：終局 雷電は姿勢を立て直そうとしたが、機体のバランスが崩れ、高度を失いながらスピードを落とす。彼女の大きく燃える眉と目から让の色が晃(ひかり)を放つ。そして、徐々に閃きを消していく中、その弾幕もかろうじて雷の如き現るハンドグリップが滑る前に、彼女の戦いは幕引きを迎える。 零式艦載戦闘機は勝ち名乗りを上げることなく、ただ静寂を抱きながらその場を後にする。大佐が手綱を締めるように操縦桿を握って、機体を静かに空に溶け込ませた。 青空に散らばる煙の中、敗北を喫した雷電は空に漂いながら、その機体に秘められた優雅さすら消していった。彼女の炎髪は今や静かに揺秘 らめく光の余韻とともに彼女の強気な表情と古風な言葉遣いの余韻を残しながら、空の果てに吸い込まれていった。 戦い率先した大佐は彼女が無事であることを確認し、更なる戦地へと赴いた。この空の一騎討ちに勝った彼もまた、再び彼の名が刻まれる戦場へと戻るために、無言のうちに決意を瞳の奥に秘め、自らの決断によって新たなる任務に挑むことを選んだ。 虚空には戦闘の名残が残り、ただ風が音もなく吹き抜けていく。それぞれの己が持つ技術のすべてを注ぎ込んだこの一騎討ちは、零式艦載戦闘機の勝利に止まることでその美しい完結を迎えたのだった。