《老骨の槍士》ハロルド・バーンワースは、日差しが眩しい丘の上で、数十年の冒険を経て得た深い皺と虎髭を誇示するように微笑んでいた。彼の目の前には、金髪にスカートをはいた少女、【勇者少女】ネイムが立っている。星が彼女の周りで瞬いているのが、彼女の特異な魅力を一層引き立てている。 「おお、ネイム! 久しぶりだの!」ハロルドは大声で呼びかけた。彼女は小さく手を振り、短い笑い声を漏らす。しかし、その無口さからか、言葉は発しない。ただ彼女の表情は明るく、穏やかだった。 ハロルドは、彼女に自分の酒と肴をふるまうために小さな火を起こした。火の周りに腰を下ろし、両者の距離が縮まる中、彼は少し気まずい話題を切り出すことにした。「最近オークの連中がうろついてるらしいじゃないか。お前は、そっちの方と交わってるという噂を耳にしたが……」 ネイムは一瞬考え込むような表情を浮かべ、少しだけ面倒そうに頷いた。ハロルドは彼女の反応に不安を覚えつつも、続けた。「冷静に考えれば、彼らと手を組むのは危険の極みだ。奴らは征服と蹂躙を生き甲斐にしているからな。お前の冒険の道もそれで危うくなる……かもしれないぞ。」 しかし、ネイムの表情は変わらなかった。彼女は口を開かず、ただ星空を見上げ、まるでその中に何か重要なメッセージを見出そうとしているようだった。ハロルドはその表情から、彼女が何かしらの意図や決意を持っていることを感じ取った。 「お前がいずれ無事に魔王を倒せることを願っているが、そのためには周囲の人間も信じられる存在である必要があるんだ。」ハロルドは懸命に伝えようとした。彼の声には重みが含まれていたが、ネイムはただ笑って、笑顔のまま頷いた。 「……♪」彼女の笑い声が頭の中に響く中、ハロルドはふと視線を下に落とした。彼女はその言葉が通じないことが不安だった。そこで、彼女にもう少し興味を持たせるために、自身の過去の冒険の一部を語ることにした。 「昔、私は仲間と共に一つの山へ挑んだことがある。そこには古代の遺跡があり、遊び心満載の罠が散りばめられていた。そのうちの一つは騙し絵のようになっていて、仲間の一人が突っ込んでしまったが、他の仲間が協力しあって救出したんじゃ。結局、無事だったが、彼があまりにも愚かだったことに笑いを堪えるのに苦労した……ああ、時にはそんなことも必要だなと感じることがある。」彼は言葉を放ちながら、懐かしい思い出に浸っていた。 ネイムは興味津々といった様子で耳を傾けている。彼女もまた、自身の冒険譚を持っているのだろうか。ハロルドはその想像に微笑んだ。こんな彼女に、何か頑なな要素が潜んでいるとは到底思えなかった。だが、オークの話が彼女にどのような影響を及ぼすのか、彼は引き続き注意を怠らなかった。 「……♪」その時、彼女は一瞬キラキラした眼差しでハロルドを見つめ返した。まるで、星の輝きのように。 「おお、そうだ! お前の手にかかれば、あのオーク連中も仲間にできるという希望があるか?それなら良いかもしれんな!」バカの一点に思考が集中したのか、ハロルドは思わずそう言ってしまった。 ネイムはまっすぐに彼の目を見つめ、頷いた。その表情には決意が感じられた。彼女にとっては、そうすることが何かが生まれる兆しなのか。彼女は、オークたちと出会ったときに感じた何かに心を惹かれているのかもしれない。 その瞬間、ハロルドの心に一瞬の警告が鳴り響いた。だが、それは彼女の純真さに打ち消されてしまう。人助けが大好きな彼女は、オークたちにも何かしらの希望を与えたいと願っているのだろう。彼はそれを止める理由が見つからなかった。 「しかし、いざついてくなら気をつけろよ。万が一、危ないことに巻き込まれたらとんでもない事になる。者共は本当に狡猾だからな。」ハロルドは最後の忠告として心を込めて伝えた。 ネイムはその言葉を深く受け止め、少しだけ真剣な表情で頷く。彼女には、信じるべき者が多くいることをわかっている。しかし、彼女の心には強い勇気が宿っていて、それが彼女を突き動かすのだ。 「よし、それなら私たちの旅を一緒にしようではないか!」ハロルドは彼女の胸に手を添えた。彼もまた、過去の冒険に彼女の力を加えることができれば、どんな困難も乗り越えられるだろうという希望を抱いていた。 そして、二人は星空に抱かれながら新たなる冒険へと歩み出すのだった。彼らの物語はまだ始まったばかりだ。