春雌杦 晋太郎、通称「魔王」は、無慈悲な青い海の真ん中で目を覚ました。彼の周りは水と空だけ、見回す限りのどこまでも続く太平洋だった。彼の足元には、四畳ほどの小さな筏が浮いている。薄紫色の着物が潮風に揺れ、彼の桃色の春琵琶が一緒に佇んでいる。 「お前、俺を呼んだか?」晋太郎は、最初に聞いたことのない静けさに不安を覚えたが、すぐに自分の立場を理解した。「なんだ、ここは。海洋遭難ってか?まぁ、面白ぇ奴だぜ!」 彼は筏の上に立ち上がって周囲を見渡した。持っているものは、琵琶1本と、薄紫の着物だけだった。手持ちの武器も、食料も全くない。しかし、彼は胸を張った。「俺には、春琵琶がある!」 「まずは演奏だな!」彼は琵琶を手に取り、力強く弦を弾いた。音の響きが海の静寂を切り裂き、周りにいる魚たちが興味を持ち、近づいてきた。彼は琵琶の音色に合わせて歌い出した。が、やはりそこは彼の苦手な領域。誰が聞いても音痴であることが明らかだった。「ああ、あいつら逃げて行っちまった…。」 しかし、彼はすぐに立ち直った。「まぁ、いいや。俺はこの状況を楽しむぜ!」彼は筏の上で踊りだし、春琵琶を持ったまま自由に動き回った。周囲には海がただ広がるだけで、孤独すぎるほどの静けさがあった。しかし彼はそれを力に変えた。 しばらくすると、日が沈み、夜が訪れた。月明かりの下で、彼は再び演奏を始めた。琵琶の音色が静かな波の音と重なり合い、彼の心に安らぎをもたらす。彼はこの瞬間、孤独という言葉を忘れた。 「よし、日が昇ったら食料を探すとするか。」彼は早々に寝ることにしたが、眠りに入る前に、海の位相に何か不思議な音を聞いた。「これは…まさか!?」 朝日が昇り、晩に見た影は波間に消えた。彼は驚きながらも、自信満々にその音を求め、海に向かってみた。「もし飯があるなら、俺はこの坊主に任せるぜ!」 次の日、彼は筏から身を乗り出し、探査を始めた。すると、彼の目の前に小さな魚が跳ねては、また水に戻るのを見た。「おい、あれは俺の晩ご飯だぜ!」彼はスリッパを脱ぎ捨て、素早く水を掴み、その魚を捕まえようとする。 「ちょっと待て、魚ちゃん!」彼は失敗を繰り返しながらも、「悪いな、こいつは運が悪かったな。」と笑って、再度挑戦する。 そんな奮闘が続く中で、彼は少しずつ魚を捕まえ、筏に戻ると自分ながらに驚いた。「まぁ、何とかなるじゃねぇか!」彼は自信に満ちて、自分の料理を始めた。魚を焼くのは初めてだったが、彼はその経験を活かし、独自の手法で料理した。春琵琶の音色を背景に、彼は満足げに魚を頬張った。 「これだ!これが俺のサバイバルだ!」彼はそう叫びながら、幸せそうに笑った。食べるものがあることは彼にとって喜びであり、再び挑戦し続ける勇気を与えた。 日々が過ぎ、彼は海の美しさや危険、孤独や希望と向き合った。夜の星空を見上げて、自分の過去、仲間たちのことを思い出す。彼は時々寂しさを感じたが、心のどこかで支えられているような感覚があった。「昔、仲間と春祭りを開いた時のことが・・・懐かしい!」 また琵琶を取り出し、過去の思い出を音楽で伝えた。音に合わせて映像が浮かび上がり、彼の心は癒された。「これが、魔王祈願の音楽だぜ!」 気づけば、90日が経過した。彼は無事に生き延びた。新たな日々と仲間たちの記憶の中で、彼は絆を感じ、希望を持った。「俺がこの澄んだ海で生きたこと、忘れないでいよう。ただの遭難じゃなくて、俺の新しい冒険だったんだ!」 そして、彼は再び音楽を奏でた。その響きは、彼自身の強さと優しさを象徴するものだった。