路地裏は薄暗く、白く朧げに光る街灯が一つ、僅かな明かりを発していた。その光の中で反射する湿ったコンクリートの壁に、一つの影が寄り添うように立っている。榊京介である。彼の手には、二つの武器——クールな金属光を放つチャクラムと、赤銅に染まったナイフが握られている。静かな闘志が彼の目に宿り、背筋を伸ばしている。 「今日は会う気はなかったんだがな……野村寛次郎、無理やり引き摺り出してしまったか?」 声が耳に響く。京介は周囲を見渡す。そこに姿を見せたのは、野村寛次郎だった。長い髪をそのままに、赤と白の半袖の和服を身にまとい、自信に満ちた微笑を浮かべる。糸目が光を反射し、まるで闘士の子供のように見えるが、その実力は確かなものである。 「榊京介、私は君の力に興味がある。凄腕の剣士たちと戦うのが好きだ。君と戦うことで、その実力を証明できるかもしれない」 京介は冷静に彼を見据えた。戦いがこの後どうなるか、全ては自分の意思次第だ。どちらも譲らぬ決意を秘めている。 「剣豪集団の最高傑作か……自信過剰なだけではないか?」 言葉が飛ぶと同時に、二人の目が交差する。静寂を破るかのように、両者は同時に動いた。寛次郎が日本刀を抜き放ち、一気に切り込む。握力は尋常ではなく、一瞬でリーチが延びる。京介はその動きに即座に反応し、チャクラムを放つ。 金属が空を切る音を立て、そのチャクラムは宙を舞って彼の真横を通過し、寛次郎の肩にヒットする。しかし、彼は痛みを知らぬかのような冷静さで、すぐに反撃へと転じる。京介の鋭い目が、彼の一挙一動を捉える。 その瞬間、京介はナイフを投げる。寛次郎の動きに合わせてすれ違い、彼のこうもりのように下がる。だが、寛次郎はやはり懸命にそれをかわし、再度、刀を振るう。 「どうした、榊!」寛次郎が声を発した。「その精度を持つなら、もっと強く来い!」 「強く来い、だと?お前に合わせているつもりは無いつもりだ」という言葉とともに、京介は相手を引きつけ、自らの隙を狙う。 タイミングを計り、寛次郎の攻撃をかわし、あえて距離を取りながら自らのナイフをしっかりと握りなおす。そして即座に距離を縮める。寛次郎はその直後、京介が持つチャクラムの軌跡に注意を払わなければならない。 「来い、無理しないで」京介が冷静に言い、再度チャクラムを放とうとする。「お前のこの刀さばき、見物させてもらう」 二人の間に、緊張が走る。先ほどまでは目にも見えなかった隙間が、今は微かに幅を持って現れ始めた。それを察知した京介は、瞬時に跳ね返って距離を取ったが、寛次郎はそれを読んでいたかのように後続の攻撃を重ねてくる。 「隙だらけだぞ、榊」寛次郎は不敵に笑いかけながら、再び猛アタックを続ける。 その刃が京介の側面を切り裂こうとする。京介は流れるように身を捻り、ナイフを持つ手を少しずつ防御に移行させながら、一瞬の隙を作ろうとする。 「無理だ…これが本物の剣士の力だ!」 ものすごい速度で切りかかる寛次郎の剣が、京介の身体全体を通り過ぎる。直後、京介はようやく反撃のタイミングを見つける。刀をセーニングするチャンスを貰い、ナイフで切り返す。 「ああっ、あっ!」突然叫ぶ寛次郎。彼の素晴らしい技術が、そのまま逆らうように衝突した。 一瞬硬直するが、寛次郎はすぐに立て直し、笑顔を浮かべる。しかし、その目はこれまでとは少し違った輝きを持っていた。今まで執拗に追い込んできた榊が、何かを感じ取ったのだ。 京介は静かに、冷静に彼の顔を見つめた。「お前の力は確かに感じた。だが俺は退くつもりはない」 「よく言った、俺も同じだ」 二人は互いに息を整え、これまでの攻防を再度繰り返す準備を整えた。京介が一呼吸深く吸うと、突然彼の姿が消える。寛次郎の目の前で出現したのは、鋭いチャクラムの影だった。 「来るぞ!」寛次郎はすぐに反応し、日本刀を構える。しかし、この一撃は意外にも自らの体を摑むように突進してきた。京介は刀を外し、ナイフを自由に動かして、彼のリーチを切り替えた。 答えるように、寛次郎は剣を立て、攻撃を続けるが、京介はその一撃をことごとく見極めて回避する。彼の反応速度は限界を迎え、ついには京介の一撃が寛次郎の側面に刺さる。 「うっ!」彼は思わず声を上げ、痛みによろめくが、すぐに反抗的な笑みを浮かべる。 「いいぜ、榊。俺もお前の力を少しは感じてきた。だが本気を見せてみろよ!」 その言葉が京介を刺激した。彼の目が鋭く光り、もう一つの姿勢を取る。彼は一瞬目を閉じ、体系を整え、再び寛次郎へと向き直る。 「行くぞ!」京介は力強い声を放ち、一気に前進する。 攻防が続く中、京介は自らの痛みを感じず、問題のない確信を持って、心の底から力を発揮する。寛次郎はそれに追随し、反撃するまでの反応速度を利かせる。 二人の武器がぶつかり合い、響く音が路地裏に反響する。その音が静寂をさらって行く。その中で、京介は見えぬ隙間を発見した。 一瞬、彼の動きが鈍る。これだ!その隙間が最後の隙だ。京介はその瞬間を逃さず、全力を込めてナイフを振るう。 その一撃は、寛次郎の刀の動きにぴったりと合致し、その瞬間、複雑に絡んだ二つの武器が衝突する。その反動で、二人は片膝ついて崩れ落ちる。 「榊、目を覚ませ」寛次郎は意識が遠のいていく中、力強い声を放つ。 その一言が、京介の胸に響いた。彼もまた、快感とともに身体が持つ力の限界を超えようとしている。彼は立ち上がろうとし、膝をついている寛次郎をじっと見ヤる。 「お前には優れた技があった。それができるなら、次はお前が立ち上がれ。」京介が声を漏らす。 二人の目が合い、無言のまま理解し合う。戦士の誇りが、それぞれの中に根付いている。 彼らの闘志はそれでも消えない。衛と火のように、互いを認めようとしている。立ち上がり、もう一度自分の力を振り絞る。 「行くぞ、野村寛次郎!」 「来い、榊京介!」 再び二人は戦いの舞台へと戻り、信じられない熱気が周囲を包む。再び始まる死闘。それがどれほど繰り返され、どれほどの力が交わっても、決着はまだつくことがない。彼らの戦いは、続いていくのだ。