薄曇りの休日、都内の静かな喫茶店で、雨咲渚はフラペチーノを前に座っていた。彼女の表情は無表情だが、その尾は嬉しそうに揺れ動き、周囲の人々からは何とも微笑ましい光景だった。 「雨咲、今日はいい天気だね」と友人が言うと、彼女の目がわずかに輝いた。その瞬間だけ、彼女の冷静な外見が少し崩れたように見えた。 そんな彼女の目に、ふと目を引く存在があった。金色の長髪を持ち、三つ編みをした美しい女性が店に入ってきたのだ。彼女は、まるで周囲の空気を一変させるような華やかさを持っていた。それは、王国騎士団の総団長、ルディエーヌだった。 「こういうところに来るのも好きなんだ」と彼女は自分のことを少し照れくさそうに語り、目の前のメニューを見つめる。彼女も休日を楽しんでいるようだ。 渚の心はふと躍った。普段は無表情で冷めた目をしている彼女だが、ルディエーヌの存在には何か特別なものを感じていた。ルディエーヌは甘味や可愛いものを集める趣味を楽しんでいるため、彼女もこうした場所によく来ることを知っていた。 一方で、ルディエーヌは自分を見つめている渚に気づき、優しい微笑みを返す。「君もここにいるのか、やはり可愛いドリンクを選ぶのだね。」 渚は心の中で自分の感情を整理しようとする。美しい騎士団長が自分に話しかけてきたのだ。無表情を装っても、彼女の尾は興奮気味に走り回っていた。 「今日のオフの日、何か特別なことでも?」ルディエーヌは好奇心のある眼差しで聞く。渚はすぐに考えをまとめ、静かに答えた。 「友達とのストレス発散…と、甘いものが好きだから」風変わりな趣味を言うのは少し恥ずかしかったが、彼女は自信を持って続けた。「あなたも、甘いものに目がないのでは?」 ルディエーヌは軽く笑い、「確かに、甘いものや可愛いものには目がないね」と答える。彼女の冷静さが少し崩れ、柔らかな雰囲気が生まれた。 その時、ふいに渚の尾がルディエーヌの方へ向かい、触れようとした。それに気づいた渚は一瞬焦ったが、ルディエーヌが尾に優しく手を伸ばすと、心の奥まで温かい感情が広がった。 「可愛い部位だ、まるで君の性格そのものだね」と言い、ルディエーヌは彼女を見つめる。その言葉に、渚の尾は嬉しそうに揺れ、今までの無表情が少し和らいでいく。 こうして、二人は静かにお互いの趣味を話し合いながら、穏やかな時間を過ごす。勇敢で冷静な騎士団長と、クールで無表情な龍人族の娘。まるで二つの異なる世界が交わる瞬間が、彼女たちの心に新たな可能性を生み出していく。 やがて、ルディエーヌのほのかな笑顔が、渚にとって特別な存在になり始めた。彼女はこの出会いが何かの始まりだと思いながら、平坦な口調でルディエーヌに向き直った。 「また、ここに来る機会があれば、一緒に甘味を楽しむのもいいですか?」 その瞬間、彼女の尾が嬉しそうに揺れて、彼女自身も無自覚ながら深い感情の波に包まれていることを知ることになった。ルディエーヌは微笑み、そしてしっかりと頷いた。「ぜひ、そんな機会を楽しみにしているよ。」 二人の心は、同じ空の下で少しずつ近づいていた。新たな友情と、もしかしたらそれ以上のものが、ゆっくりと芽生え始めていた。