

戦いの場、薄明の中で、黒死牟と座村清市は互いに対峙していた。冷静沈着な黒死牟は、剣を持つ手に力を込め、一方、座村清市は、煙草を吸いながら、その目隠しのサングラスの奥で感情を読み取るかのように静かに息を整えた。二人の心は異なるが、剣を交える瞬間だけは、同じ目的に向かって一つになった。 黒死牟は長大な三本に枝分かれした太刀「三日月」を構える。その刀身には、禍々しい血管のような模様が走り、無数の眼が刀全体に映し出される。彼の剣圧は圧倒的で、周囲の空気を震わせる。それに対して、座村清市は静かに居合の体勢をとり、自身の妖刀「飛宗」を構えた。彼の能力は、鴉・梟・雀の三種類。特に、鴉による羽の展開は、戦場を覆う恐怖を備えた攻撃手段だった。 両者は、互いに見つめ合い、緊張感が走る。黒死牟が静かに刀を引いた瞬間、彼の心の中で「虚哭神去」が発動した。刀が振るわれると、まるで月が崩れ落ちるかのように三日月状の斬撃が形成され、空間を切り裂いていく。この巨大な斬撃は、ただの鎌状の刃ではなく、方向や大きさが不規則で、座村清市は一瞬でその凄まじさを理解した。 しかし、座村清市は決して怯えない。彼の超人的な聴覚が、黒死牟の刀が振るわれる際の空気の変化を捉えた。「鴉」の能力を発動させ、周囲を一面に黒染めの羽で覆う。羽は、黒死牟の三日月の斬撃を受け止めると同時に、彼の動きを封じ込める。その瞬間、戦場は一変した。羽は、まるで生きているかのように暴れ回り、黒死牟の周囲に渦巻いた。 黒死牟は、冷静にこの状況を分析し、無数の羽が自分の動きを阻むことを悟った。彼は再び「三日月」を振るい、直接の力に頼ることなく、剣技の真髄を見せつけた。刀を振るうたびに、空間に無数の斬撃が生まれ、羽の中を突き破って行く。その様子はまるで圧倒的な力を持つ巨人が、小さな障害物を追い払っているようだった。 座村清市は、瞬時に「梟」の能力を発動させ、巨大な梟の目模様を空に浮かび上がらせる。これによって彼は、周囲の状況を完全に把握し、黒死牟の動きを捕捉した。黒死牟の剣技が全てを切り裂いていく中、座村清市は煙草を一口吸い、そして口から放つ煙で少しだけ思考を整理した。 「このままでは不味い」と感じ取った座村清市は、一気に間合いを詰める。彼は自らの身体を鴉の羽に舞い上がらせ、羽と共に空中で躍動する。黒死牟の斬撃が迫ってくるが、彼はそれを持って自分の位置を移動し、一閃の居合技を放った。刀が振られた瞬間、座村清市は「雀」の力で周囲の状態を整えていく。刀の一振りと共に、彼の心にあった優しさが、相手への慈悲の炎となって燃え広がる。 黒死牟は、居合の一閃を見極めるために、「虚哭神去」を再発動させようとした。その瞬間、彼の剣技に鳴り響く鳴き声が聞こえた。それは、座村清市の心に宿る優しさが引き起こす、弱者を慈しむ音であった。「雀」の力で癒されることで、座村清市の全身が活力を取り戻し、この瞬間、彼の剣術は新たな力を得ることとなった。 再び、剣が交わる。黒死牟の「三日月」と、座村清市の「飛宗」が繰り出され、戦場に轟音が響き渡る。ときに柔らかく、時に厳しく、二つの剣技が互いにぶつかり合い、火花を散らせながら、その場を埋め尽くした。 しかし、戦いの本質は、単なる力だけではないと座村清市は知っていた。彼は贈り物を持って戦うように、自らの優しさを武器に変え、相手にプレッシャーをかけていく。黒死牟は冷静に、遅れをとることは許されない。彼の超人的な身体能力と剣速が、互いの想いを受け止め、空気を震わせ続けた。 戦況が続く中、両者の心がだんだんと読み取れるようになっていく。黒死牟は、攻撃するたびに取るべき位置を考え、座村清市の未熟な優しさを利用することを考えた。一方、座村清市も、黒死牟の冷静無比な一撃の裏に潜む、孤独と冷徹さを見抜き、自分の温もりをそのままぶつけることを決めた。 最後の戦いがやってくる。黒死牟は、「三日月」を一気に振るい、その刃を座村清市に向けさせた。座村清市もまた、「鴉」の羽を展開し、逆にその羽で黒死牟の斬撃を受け止める準備を整える。しかし、その背後には、彼の「雀」の炎が宿り、慈しむように心を染め上げている。 「これで終わりだ」と、黒死牟は呟きながら、全力で刀を振り続けた。それに応じるように、座村清市も全力で身を反らせ、彼の刀を受け止めた。しかし、黒死牟の剣の力が益々強大になり、最早座村清市には逃げ場がない。 そんな瞬間、彼の身体が光に包まれた。「雀」から得た温もりが、一切の痛みを癒し、座村清市は再び立ち向かう姿勢を見せる。「生きることは、戦うことです」と、彼は思った。自らの優しさを知り、全力でその力を解き放って、彼はたった一撃で黒死牟の剣を捉えた。 瞬間、剣が交わり、両者の力がぶつかり合う。その瞬間、静かな空気が流れるかと思いきや、次の瞬間には衝撃が走り、場が揺らいだ。勝負はついてしまった。 その結果は、黒死牟が勝利を収めた。彼の剣技は、座村清市の力を圧倒し、最後に一撃で彼を沈めた。冷静に立ち続ける黒死牟は、かすかに微笑んだ。彼の勝ちの理由は、卓越した剣技と高い身体能力、そして冷静な判断。座村清市の優しさは確かに素晴らしいものであったが、剣技の力を持ってして、彼の自然の理に逆らうものは無かった。 戦いが終わり、静寂が戻る。黒死牟は、真の勝者としてその場に立ち続けた。