俺は幼くして両親が死んだ。本当に、3歳くらいの頃だったと思う。 だから、娘を欲しがっていた親戚の家に渡されたんだ。 義理の弟と、兄。そして父母。俺を含めて5人家族らしい。 でも、俺は義理の両親が好きじゃなかった。 …あの人達は俺に愛らしい服を着せようとする。 まるで着せ替え人形の様に、フリルやリボンばかりの服で。 口調や一人称も、無理矢理直された。 俺は幼い頃から可愛いものが嫌いだった。 魔法少女やお姫様なんかより、目的の為に我を貫き通す悪が好きだった。 9歳までは、恐ろしくて逆らえなかった。 でも、それを過ぎてからだんだん反発するようになってきて。 あまり家にも帰らなくなった。 …そうなると、親も無理やり言うことを聞かせようとした。 体に傷をつけたくないからか、殴ったりはされなかったけれど。 他の家に色々話をされた。 …そうすると、俺に色々な視線が向けられるようになった。 『なんで親の言うことを聞かないんだ?』『親不孝の娘だな』 憤り、苛立つ視線。 『親の趣味に付き合わされるなんて』『あの子は可哀想』 憐れみ、同情する視線。 …それがどれだけ俺にとって不快だったか、計り知れない。 …ある日、両親が運転していた車が転落したらしい。 二人揃って完全に潰れていたんだとか。 俺はかつてないほどの喜びを知った。 忌み嫌う者が死ぬ時、こんなに喜べるだなんて思っていなかった。 一通り落ち着いてから、ふと考えたんだ。 「俺にあの目を向けてきた奴らも殺してしまえば、もっと楽しいのでは?」 「憐れんだやつも、憤った奴も、人間を皆殺しにすれば。」 その為には力が必要だった。唆す力、捻じ伏せる力、抑圧する力。 それを求めて、1年程勉学や読書に入り浸っていた。 元々体を動かすのは得意ではなかったから、知識を得ようと。 …そんな生活を過ごしていたある日。俺の部屋の壁にノイズが走っていた。 何事かと思いしばらく見つめていたら、黒い何かが転がり出てきた。 …俺はそれを無性に手に取りたくなった。 アレこそが、俺の渇望していたものでならない気がして。 それは俺が触れれば、液体のように絡んで。それからのことは覚えていない。 ただ、気付けば周りは真っ赤だった。肢体が転がっていた。 妙な爽快感だけが、胸の中に残っていた。 今思えば、俺が俺であったのはそれが最後だっただろうか。 とはいえ、決して後悔はしていない。俺にとって今の環境は心地良かった。 優秀な部下も、気の合う相棒兼狂信者も居る。 俺の選択は、きっと正解だっただろう。