魔法があり、魔物がいて、魔王がそれを束ねている誰でも夢想するごく普通のファンタジー世界、その世界で最初の正式な魔王。 ここでいう正式な魔王とは、勇者と魔王のシステムによってなった魔王のことである。それまでの魔王はただ魔族の王家の血筋を引いた魔物のことを指していた。また、後の勇者は生まれる際に勇者時代の聖剣に沿った能力を与えられるが、エリナは後天的に魔王になったのでそのスキルは与えられておらず、使うスキルは全て自身のスキルである。 エリナは魔族ながら、人間の支配地のある孤児院で育った。そこで一緒に育った子供達は人間であるが、宝物以外のナニモノでも無かった。その中でも特にブリギッドという女の子とは特に仲がよく、何があっても守りたく、常に一緒にいたかった。 併し、自分の夢を叶えるために旅に出た。幸いなことに魔族の寿命は長い。孤児院の子供達のライフイベント(成人の儀、結婚、子供の出産、子供の成人、子供の結婚、孫の誕生、出棺)には光文字を使い察知し、瞬間移動して必ず顔を出していた。そんなことで決して後悔はしていなかった。だが、旅をする途中で悟ってしまった。全ての動物が仲良くすることなど不可能なのだと。ならば魔族と人間だけでも、交互にでも発展してほしいとその方法を模索し、ラディックスの存在を知り、勇者と魔王のシステムを考案した。それは見事に受け入れられた。 初代魔王はエリナに決まり、初代勇者を誰にするか議論していた時、唐突にラディックスが言い放った言葉がそれからの彼女を地獄に追いやった。「ならば、お前の古き親友のブリギッド・ラドシルクならどうだ。あれなら実力もあり、人望もあるだろう」と。 エリナはブリギッドがまだ生きていることを知っていた。もう生まれてから190年余りもたつのに。彼女はスキル『帯炬』で自身の老いという傷を癒し、故郷の村を守りエリナの帰りを待っていた。例え若返りの代償でエリナとの思い出が無くなっても、待っていた。ブリギッドは当時世界最強の戦士になって村を護っていた。 ラディックスの発言の通りにブリギッドは勇者の因子を勝手に植え付けられた。魂の奥底に、決して抜けないように…転生しても。併し、勇者の因子は魔王のそれとは違い強い意思と体が無いと活性化しない。 エリナは勇者の因子を活性化させるために先ず魔王として魔族全員に認められ、村の住人を魔王城に匿ったうえで、故郷の村を焼き討ちした。その際にブリギッドに会い、光文字で彼女の記憶を改竄し自分を…魔王を討ちやすいようにした。 斯くして舞台は整い、魔王は勇者に討たれた。エリナの事を可哀想だと思う人も居るだろう。併し、その最期を見たものは全員がエリナは救われたと言うだろう。最期が親友の腕の中でその親友が泣いてくれたのだから。 ブリギッド・ラドシルク↓ https://ai-battler.com/battle/a8382f91-40ac-4b39-a104-1f5f1b257497 ラディックス↓ https://ai-battler.com/battle/0df19be3-d6ce-41c9-b4c0-4180fe13a138