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勇者少女

 ___【勇者】  それは勇ましい者、これは蛮勇を掲げ、そして決して逃げない愚か者を描いた物語である。  ___勇者は言った。  「ねぇ王様!、さすがに銅貨3枚はケチすぎませんか?」  「いやいや、旅の装備品も提供したじゃろ?」  「でもコレ、市場で銅貨1枚ぐらいで売られてる安物セットでしょ?」  ___ギクリ…!  「ほ…、ホホホホッ、王国も魔王の影響で財政難でな」  「えェ〜〜〜………!」  「か、代わりにお主には仲間を付けてやるぞ!」  「えっ!、ほんと!」  ___パッ  勇者の表情は明るくなった。  【🎉 精霊がパーティに加わった。 🎉】  ここは出発の森、勇者は新たな仲間、黒猫の姿を模した精霊が仲間に加わった。  ___が、しかし、、、  「はぁ……、今度はガキのお守りかよ…」  黒猫は不機嫌そうな顔で葉巻のタバコをスパスパ…、と吸っている。  ___プハ~~~………、、、  「いや、別にいいんすよ?、世界を救うんでしたっけ?、子ども一人に救われる世界なんて笑っちゃいますけどね。とうとう王国も人材不足って奴ですかね?、だったら俺も帰っていいすか?、まじで世界を救うのに猫とかいらないっすよね?、俺って精霊として数百年は生きてますけど、猫が活躍する神話なんて聞いた事ないですもん。仲間にすんなら絶対に俺なんかじゃなくて希望に胸を高まらせた魔法使いとか、戦闘狂の僧侶とか雇った方がよっぽど適任ですよね?、なんで俺なんすか?、まじで俺なんかやっちゃいました?、王様に恨まれる事でもやっちゃいました??」  ___と、いう事で、色々とストレスを溜めていそうな仲間が増えた訳である。  「私は勇者!、よろしく!」  「勇者?、名乗るなら普通は職業じゃなくて本名とかでしょ?、まさかあれですか?、過去なんて捨てて新たに出発しようとしちゃった系の人間ですか?、たまにオタクみたいなタイプの人間いるんですよね、自分の役割を誇りに思いすぎて称号とか役割で自己紹介する奴、数年前にも異世界から転生とか転移とか訳の分からない事を言って死んでいった人間がいっぱい居ましたよ、オタクもそんな感じなんでしょ?、王様の口車に乗せられて魔王討伐!、めざせ世界平和!……なんて夢物語を見てる感じの人間なんでしょ?、俺そんな暑苦しい人間は嫌いなんで距離を取ってもらってもいいですか?」  「え、えと〜??」  勇者はあまりの長話に脳みそがオーバーヒートした。  「あ、ちなみに俺は"黒猫の精霊[セバル]"って名前があるんで勝手にタマとか適当な名前を付けて呼ぶのはやめてくださいよ?、俺ってそんなタイプの人間ほんと嫌いで、前にも以前に飼ってた猫に似てるから!、って理由でジョセフィーヌってヘンテコな名前で呼ばれた事があるんでマジで勘弁してくださいよ、それにそういう人間に限って命は皆んな平等だの、家畜を食べるのは可哀想だの、オーガニックしか使わないとか言って面倒臭いんで、それはマジで勘弁して下さいよ?、そうだとしたら俺はオタクを冤罪で逮捕させて王様に処刑するように懇願するぐらいはしますよ?、ほんと元の生活にサッサッと戻らせてもらいたいんで。それに俺って宮殿では今日まで贅沢に暮らせてたんですけど、勇者だの救世主だの訳の分からない小娘のせいで全部台無しなんですよね?、どうしてくれますか俺の生活?、俺のパラダイスは何処にありますか?、ここですか?、今ですか?、後ろですか?、いやいや違いますよね?、なので早めに死んで王国に死亡報告書を提出させて下さい、そうすらば俺ってまた自由自適に暮らせちゃうんで、マジでそれが良いんで死んでくれないっすか??」  ___と、精霊ことセバルは言った。  「……………。」  勇者は沈黙する。  「あっ、もしかして俺のせいで心が傷ついちゃいました?、やっぱ勇者でも精神は子どものままなんすね、ほらほら体がそんなに震えちゃって怒ってますよね?、そんなに怒らなくてもいいじゃないですか?、これから旅する仲間にも暴力を振るう系の蛮族みたいなタイプですか?、そんな愚かな野蛮人は王国の騎士たちに逮捕された方がいいと思うのは俺だけっすかね?、マジで怖いんでやめてもろ………」  ___パチンッ…!  自業自得な平手打ちが精霊セバルを襲った  「え…?、いま俺のこと殴りました??」  セバルは驚いた様子で地面にへたり込んでいた。  すると……、  ___スッ  勇者は静かにそこら辺に落ちていた枯木を拾い、こう呟く。  「私、牧場で育ったので父に動物を飼う時には最初の主従関係が大事だって耳にタコができるほど何度も言われてきました。」  ___ググッ  「そして、その中で一番手っ取り早い手段が"暴力"だって事も小さい頃から念入りに教えられてきた事なんですよね」  勇者は枝を握りしめ、空高くに構える。セバルは言った。  「えっ?、嘘ですよね?、俺ってこんなに可愛い猫ちゃんなんですよ??」  ___勇者は告げる。  「覚悟……ッ!!」  「うぎゃぁああ〜〜〜ッッ!!!」  精霊の叫び声、何度も森の中に響いて消えた。  【🦵勇者は旅を再開した。🦵】  「へ……、へへ…、よければお荷物をお持ちしますぜ、"姉御"」  ゴマを擦って勇者の歩く後ろをウロウロとする先程の精霊、その顔はひどく腫れていた。  ___勇者は質問する。  「ところでタマってさ、この辺に泊まれそうな村とか知らない?」  「し、失礼ながら俺の名前はセバルって言うんですが……」  ___ギロッ  「ひぃっ!、すんません!、タマでいいです!」  セバル、改めて精霊"タマ"と勇者の旅が始まった。  ___森の中、焚き火を囲む。  「そんで姉御、これからの行き先はどうします?」  精霊タマは問いた。  「とりあえず、食事にしない?、私もう腹ペコなの」  そう言って勇者は背負った鞄からフライパンを取り出した。  ___すると、  フライパンが輝き出す、見ると___、、、  【伝説のフライパン】  そんな二つ名が脳裏によぎった、これが勇者の能力、触れた物体を触れている間だけ伝説級の存在へと昇華する祝福である。  ___ジュッ…  焚き火に置かれたフライパン、そこに投じられたベーコンと卵に素早く熱が広がっていく。伝説級のフライパン、それは最高の夜食を作るには最適な道具であった。  ___カタカタ  フライパンの上を舞う食材、それらを優しく掻き回すのは【伝説のナイフ】である。ベーコンの表面を切った途端、旨そうな肉汁が鍋の上で跳ねた。  「うん、食べ頃だね!」  自分と仲間の分、用意された皿に傾けたフライパン、そこから焼き色の良いベーコンと目玉焼きが滑り落ちてくる。  「あっ、そうだ…!」  勇者は鞄からパンを取り出す、とても硬くて食べられるものではない保存用のパンである。しかし、それを伝説のナイフで容易くカットしていく。すると、切られた部分から豊かな小麦の香りが広がり、不思議な事に柔らかなパンとして二人の皿に数切れ置かれた。  「うん、完璧!」  勇者は自画自賛をしながら持参したスプーンで焼き目のいいベーコンと半熟の目玉焼きを自身の口へと掻き込み、その都度に柔らかなパンへと齧りついた。  「う〜ん!、美味しい…♪」  勇者は舌を踊らせ、自身の空腹をこれでもかと満たしていく。  「姉御!、俺…!、こんな美味いもん食べたの生まれて初めてですよ!」  タマがあまりの美味さに涙を流しながら掻き込んでいる。  ___勇者は笑った。  「ふふっ、タマは大袈裟だな〜」  「いやいや!、姉御の料理は王宮の料理人なんかよりよっぽど美味いですよ!、マジで魔王討伐した後は店を開きましょうよ!、その時は俺も一緒に働くんで!」  「え〜、どうしようかな」  ___と、なんだかんだ従者と打ち解けた勇者であった。  ___勇者の旅、それは時に危険が伴う。  「姉御!、危ない!」  巨大な猪が迫り来る、しかし勇者は軽々と避けた。  ___【伝説の革靴】  それが彼女の鈍足を、俊足にして迅速にして神速の走りへと押し上げたのだ。  「これで決める!、とお〜ッ!」  ___チャキ…!  引き抜いた剣、それは伝説級の輝きを帯びて勇者の一撃が放たれた。  ___ズバァァァンン…ッッ!!!  辺り一面を切り裂いた一撃、その巨体が音を立てて倒れる。  「さすが姉御!、今晩はイノシシ鍋ですね!」  ……と、日も暮れない内に晩食の準備を始める従者を横目に、勇者は己の背後に振り返った。  「んっ……??」  勇者の視線、森の奥を見つめる。  ___ビクッ、……ガサガサ  誰かいる、勇者は飛び出した。  すると……、  「ひっ……!、来ないで!、食べないで!」  なんと、ウサギの精霊と遭遇する。勇者は構えた剣を収めた。  「私は勇者!、あなたは?」  「わ、わわ、私はウサギの精霊"タラリス"と申します!」  「うん、じゃあ名前覚えるの面倒くさいから今からニンジンって呼ぶね。」  「えっ……、ニンジンですか?」  「うん、ニンジンだよ!」  「いや、それは………」  ___ガッ  勇者に肩を掴まれたニンジン。  「なんか、問題あった?」  「ひぃっ……、もぉニンジンでいいです!」  「ふふっ、これからよろしくね、ニンジン!」  【🥕パーティにニンジンが加わった。🥕】  ___ところで…、  「ニンジンは、どうして森の中に居たの?」  焚き火でイノシシ鍋を囲む一行、そう勇者は聞いた。  「は、はい……実は…」  なんと、ニンジンの話では付近で魔王の側近、つまり恐るべき四天王の一角が姿を現したというではないか!?  「それで、この私は噂の真偽を探るために派遣された調査員の一人なんです」  ___スッ  身元を証明するネックレス、その先端に付いた水晶は王国よりも北、遥か遠くに存在する帝国の紋章が彫られていた。  「そして、私はとても運が良かった。なんと、魔王討伐に向かう勇者様に会う事できたのですから」  ニンジンは嬉しそうに笑う。それに対して___、  「ふふっ、任せなさい!、勇者として私が魔王でも四天王でも全員まとめて倒しちゃうんだから!」  勇者は笑う、明日は四天王との激闘が幕を開ける。  【翌日】  「フハハハハハッ、我は魔王の恐るべき傘下が一人、四天王の【暴力的なバゼル】様だァ!」  バゼル、そう名乗った魔族の声が森全体にビリビリと木霊する。  「私は勇者!、あなたを倒すために来た!」  「勇者だと?、また魔王様に逆らう愚か者が現れた訳か!、ならば我が相手だ!、来いッッ!」  さすがは四天王の一角を担う存在、その暴力的なオーラが勇者一行を威圧する。  「あ…姉御!、ここは一旦退きませんか!?」  「そ、そうです勇者様!、ここは一旦逃げた方が得策です!」  だけど、勇者は決して逃げない。  ___スッ…!  「こういう時、勇者は決して逃げないの!」  己の剣を引き抜いた、途端にその一振りが【伝説のつるぎ】へと変化する。勇者はバゼルへと、魔族へと構えた。  ___ガキィン…!  最初の一撃、止められる。ならば、もう一度!  「ぬるい……ッ!!」  ___ドッ…!?  「ウッ……!!」  勇者の腹部に炸裂したパンチ、その小さな体躯を遥か遠くまで吹き飛ばした。  ___ズバァン……ッッ!!!  木々を薙ぎ倒しながら勇者の肉体が何度も地面を転がり、跳ねては巨木に激突する。  「くっ……、うっ…」  折れた剣、それが地面に滑り落ちた。  ___しかし、勇者はどうにか生きている。  己が触れた装備、吹き飛ばされる直前に己の着用した旅衣装に触れていたのだ。  ___【伝説の旅装備】  それが勇者自身の命を救ったのだ。しかし、先程の一撃で肋骨は折れてしまい、剣もまた折れてしまっている。その信念すら折れてしまったのではないかと勇者は己の無熟さ、無力感、絶望に力無く地面を見つめた。  ___ポタ……ポタポタ…  鼻血が垂れていく、破裂した内臓や損傷した脳みそからの出血によるものである。  ___されど、勇者は……  「くっ、ウゥッ…!」  手に力がこもる、その手が己の腰袋へと伸びた。  ___ガサゴソ…  とあるポーション、それは気休め程度の回復用ポーションであった。  すると……、、、  回復ポーションが黄金に輝く、その【伝説の回復ポーション】を勇者は震える瀕死の手で口元へと運ぶ。  【一方その頃___、、、】  「フハハハハハッ!、勇者と言えどもこの程度であったか!」  「ま、マズイ!、姉御がやれちまったぞ!」  「て、撤退するしかありませんね!」  従者2匹は主人である勇者を取り残して逃げる気満々である。  「逃がさんぞ!、貴様らも勇者と同じ末路を辿るのだ!」  「ひぃ〜!、この隣にいるウサギは好きにしていいんで!、どうか俺だけは逃がしてください!」  「ハァーッ!?、私を犠牲にして逃げる気ですか!、そんなの許しませんからね!、だったら!この私だけは見逃して下さい!、そうすれば隣のクソカス黒猫野朗は好きにしていいんで!」  「な、なんだと…!、一人だけ助かる気かよ!」  「そういうアナタだって……!」  「えぇい!、うるさいわ!、二人まとめて我の前に散ってゆけ!」  「「 ひぃ〜!、お助けェ〜! 」」  従者2匹の悲鳴、森に響いた。  ___すると、  「むっ、これは……!」  魔族は振り向く、恐るべき気配へ向けて振り返ったのである。  その視線の先___、  「なっ、勇者…!」  勇者、けれど先程の勇者ではない。その手には空のポーション瓶が"2つ"握られていた。  一つは肉体のどんな損傷も全て治してしまう【伝説の回復ポーション】、その飲み干した後の空ビンである。  そして、もう一つは……  ___パリィン…!  勇者は瓶を全て投げ捨てた。  もう一つの正体、それは己の身体能力を限界まで高める【伝説の強化ポーション】であったのだ。  私は深呼吸をする。  ___そして、叫んだ。  「私は勇者!」    それは蛮勇にして愚直!、その折れた刃先が魔族の心臓に狙いを定める。  この一撃に全てを込めた、私の全部、皆んなの全部を込めたのである。  ___バキッ…!  地面が砕ける、あまりの重圧に周囲一帯が悲鳴を挙げた。  勇者は踏み出す。  ___ダッ…!!  魔族へと迫り来る、その視線に迷いは全くない。  「くっ、我を舐めるなよ!」  魔族もまた飛び出した、次の一撃に己の全てありったりを込めて飛び出したのだ。  ___勇者は告げる。  「私の必殺技を食らえ…!、奥義ッ!、ええと……何だっけ?」  「いや!、そこは忘れたらいかんやつ!」  魔族からのツッコミ、確かにそうだな。  「んぅ〜!、とりあえず死んで!、オラッ!」  名前を忘れた勇者の一撃が魔族の胸を穿ったッ!!  「うぎゃァァァァァァァァァ〜〜〜っ!!!」  魔族の肉体が悲鳴を挙げて吹き飛んだ。  勇者は力尽きたように地面にへたり込んだ。  「いやぁ……、ほんとに今回ばかりは冗談抜きで死にかけたわぁ〜」  己のボロボロになった体に呆れつつ、勇者は今回の勝利を喜んだ。  ___と、いう事で勇者と魔王との戦いはこれからも続いていく事であろう……。  あれ…?、もう作者の都合で物語の尺が足りないだって??  むぅ〜、それなら仕方がないな…!  ___ならば!、ここから先はダイジェスト形式でお届けしようッ!!  とある魔王城の前___、  「あはっ!、私は四天王の一角、【残酷なサーベイ】よ」  「私は四天王の一角、【最弱のヨーベル】と申します。」  「ハハハハっ、俺は四天王の……」  ___勇者、  「尺が足りない!、とりあえず死ね〜!、オリャァーーー!!」  ___ドスドスドス…!  「「「 グホ……ッ!!? 」」」  残りの四天王をまとめて剣で突き刺した勢いのまま勇者は魔王の待ち受ける魔王城へと突っ込んだ。  ___バゴン……ッ!!  「ふふふっ、よく来たな勇sh」  「尺が足りないから死ね〜!、魔王ォーーー!!」  「グオーーーー!!?、理不尽…ッ!?」  こうして魔王は倒され、世界に平和が取り戻された。  あと、ドケチだった王様も次いでにシバいておいた。これで世界は平和となった事であろう。  めでたしめでたし(?)  ___ちょ、ストップ!  「姉御…!、これって本当にハッピーエンドと言えるんですかね?」  「何言ってるの!、ちゃんと魔王は倒したし、邪魔な王様も消したから正真正銘のハッピーエンドよ!、ハッピーエンド!」  「そ、そうですか……はぃ」  勇者と、その一行の終わりなき旅はまだまだ続いていく事だろう。  [完。] おしまい〜☆