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テクノコープス『ジャック』

・終末シリーズ第三章 最悪だ。騙し騙し使っていたジープが壊れてしまった。俺たちは町外れの小屋まで歩いていた。 とりあえず今日はここまでだ。次のコロニーに向かわなければならないが徒歩だと時間がかかる。 野良のアンドロイドやサイボーグビースト、ゾンビが跋扈する廃墟を夜に進むのも危険だ。 そんな時、小屋の中から足音が聞こえてきた。警戒して目を凝らすと、ゾンビと思われる人影が近づいてくる。 身構えながら手を握り締める。しかし、その様子はゾンビとは違う何かを感じさせる。 「誰だ?」 声をかけると、人影が小屋の中から出てきた。ゾンビに見えるが妙に小綺麗な作業着を着ている。 俺は身構えたが、そのゾンビはゆったりとした笑みを浮かべて言った。 「落ち着いてくれ。お前には危害を加えるつもりはない。」 ゾンビが喋った? だがその言葉に対話の意志を感しる。 「お前…… ゾンビじゃないのか?」 彼は困ったような顔をして言った。 「あーその辺はややこしいんだが、まあ敵じゃない。俺の名前はジャック。元合衆国軍の整備兵さ。」 俺は彼の話を聞くことにした。 「俺は最終戦争で前線に送り込まれて死んだんだ。だからまあ… ゾンビだ。」 そんな気はしていたが… 彼の口から、驚きの事実が明かされる。 「“ゾンビなのにどうして会話ができるんだ?”って顔だな?」 彼は笑みを浮かべながら、コンコンと自身の頭を指差す。 「俺は、機械オタクでな、こっそり電脳を違法改造して脳を少しずつ電脳に換えていったんだ。そしたらゾンビ化したときに理性と知性が残った。電脳はゾンビ化しなかったんだな。でもまあ、電脳が破壊されると俺も終わりだ。」 俺はジャックの話に興味津々で耳を傾けた。違法改造された電脳によって理性と知性を持つゾンビ…… なるほどその説明に納得する。 「なるほど、なかなか凄い改造だな。」 ジャックは肩を竦めながら微笑んだ。 「まあ、当時は限界に挑戦したかったんだよ。ある種の退屈しのぎでもあった。それが生き返るチャンスにもなったんだから人生はわからん。その人生も一回は終わっちまったけどな。でも、せっかくの『余生』なんだ、何もなくなっちまったこの世界を楽しむことにしたんだよ。」 彼の言葉に俺は微笑んだ。確かに、この世界で楽しいことを見つけるのは容易ではないが、ジャックの前向きな姿勢は尊敬に値する。 「ところで、ジープの修理はできるか?」 俺はジャックに聞いてみた。彼の整備技術なら、壊れたジープも何とかなるかもしれないと思ったのだ。 ジャックは得意げに笑って、胸を張った。 「おう、整備の腕には自信があるぜ。そうだな、あんたらについていくと楽しそうだ。せっかくだから連れて行ってくれよ。」 「ああ!もちろん!」 俺はジャックを次の目的地に誘うことに決めた。彼の冒険心と技術は、きっと俺たちの旅をより楽しいものにしてくれるだろう。