設定メモ 19歳 ___ 「ふむ。貴方が皇子ですか。」 ある青年の側に女性が立っていた。 「貴方の命を狙っているわけではありません。寧ろ、貴方の脅威を排除する者です。」 女性はその見た目と職に反してかなり喋りたがりの様だった。 「名をリラと申します。今後、貴方の元に仕える暗殺者です。」 青年は何か言いたげだったが女性は気にも止めずに話し続けた。 「リラは速く斬ることができます。用さえあれば、すぐにでも処理いたします。」 青年はまた何か言いたげだった。 女性はそれを一瞥すると話を続ける。 「ただ速く疾れること自体に価値はありません。それを出来る者は五万といるでしょう。」 「しかし、それを要する必要があるのなら得なければなりません。」 それ以上の言葉を必要とされてないはずなのに、 「かつての我々は多大なる失敗とその犠牲の上に価値を存続させてきました。」 まるで一人会話をする様に捲し立てる。 「ある者は証拠を残し、またある者は逃げられ、」 なぜ話を続けるのかも語らぬまま、 「ある者は捕まり、またある者は急所を避けられた上に殺されました。」 とめどなく話が続く。 「誰かに見つかるのであれば、」 「誰かに逃げられるのであれば、」 「誰かに捕まるのであれば、」 「誰かに殺されるのであれば、」 そうして女性は息を整えた。 「もういっその事、誰の目にも追えぬ様に。」 沈黙が流れる。 「故にリラは唯一の、貴方が簡単に遣わすことのできる暗殺者です。」 「それ故に、」 女性はこの時初めて、青年を見る。 「貴方は上手くリラを遣って自身への危害を排さなくてはなりません。」 少しの後。 「では、貴方が呼ぶ時まで。」 女性はすでに居なくなっていた。