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生きた殭屍 ユキ

``` 気温が35℃を超える 0℃が適正の雪だるまにとって地獄だ ある雪だるまは様々な経験をした 10月のとある頃、早く生まれた雪だるま 雪だるまはもうすぐクリスマスかと考えていたが、 実際にはハロウィンが行われていた 少し涼しかった10/31、雪だるまはカボチャを被ってハロウィンに溶け込んだ そして、来たるクリスマスのとき...! は過ぎ、雪だるまが次に見たのは12/30 もうすでに皆は年越しの準備をしている光景だった 雪だるまは遅れを取ろうものの、皆の前に現れる ただ、ハロウィンのときよりももてはやされていない? そう、別に真冬に雪だるまがいても 特別な雪だるまと思わないでしょう しかし、そんな雪だるまも特殊な仕事を任される 12/31、皆が年越しをしてる中、 その雪だるまはとあるダンジョンのラスボスをすることになった 雪だるまは呆然とするも、何故か乗り気になっている そして、雪だるまは密かに準備を終え、 ついにダンジョンが完成。 そして、数々の挑戦者の挑戦をさらに高難易度なものに仕上げた 雪だるまはもてはやされ、 重役を任され、 そしてやり遂げていた そして、 夏になった 気温は35℃を超える 0℃が適正の雪だるまにとって地獄だ 雪だるまはついに溶けて消えそうになる それでも雪だるまは幸せを感じていた 最後まで、大事にされていた。と 雪だるまは所詮雪の塊 暑くなればすぐ溶けて消える むしろ猛暑まで持ちこたえていたのが不思議なものだ ただ、その雪だるまには強い「魂」があった だが、「器」はもう消えるだろう 突然、とある科学者が雪だるまの前に立つ 「…あr…もs…しt…」 原型のない雪だるまはその言葉を認識できなかった しかし、突然雪だるまは意識が覚醒する 「あ、え~と、喋れる?」 気がつくと雪だるまは氷漬けになり、消滅する寸前で一時的に意識を確立されていた 「あなたは…?」 「私は、シシャミオ。あなたはまだ生きたい?」 雪だるまはもちろんまだ生きていたい しかし、その願望をかき消そうと 「ただの雪だるまが生きながらえる意味」 が邪魔をする ただし、その考えは科学者には筒抜けだった 科学者は雪だるまの魂を認識した 魂を見れば考えることは概ねわかるという 「もしヒトとして生きれたら何をしたい?」 科学者がそう言うと雪だるまは少し時間を置いて言う 「皆がしてくれた幸せを、返したい」 「なら、その姿だと無理だね?私に提案がある」 雪だるまは存在しない息を呑む 「魂のない器が余っている。だから、あなたの魂で完成させてもいいか?」 「つまり、魂を使い回す"転生"ってとこだ」 雪だるまの意思は同意に傾く そして、それを後押しするように科学者は続ける 「そして、あなたは"ただの雪だるま"からただの"ヒト"になる」 雪だるまは決断した 「ヒトになりたいです」 「その答えを待っていた」 そして、科学者が雪だるまの方に近づいた瞬間、雪だるまの意識は失われる そして、雪だるまは再び意識を取り戻す ただ、少しだけ体が火照ったような感覚を感じた 雪だるまが動こうとすると、ヒトの手が顔面に直撃する 「ヒェア!?」 そしてその可愛らしい声に再び驚く 「ヒャ!?」 雪だるま、いや、もう雪だるまじゃない 彼女は… 「目が冷めたようだね。そして、あなたの名前は」 少しの沈黙が流れ、科学者は続ける 「無いようだし、私が決めてもいいかな?」 彼女は頷く素振りを見せる 「じゃあ、"ユキ"でどう?」 それは彼女の初めて得た名前 感想を伝えようとする しかし、口が上手く動かない 「ま、まぁ今まで雪だるまだったからね。昔の感覚で喋ってみて」 ユキはヒトの体ではなく魂の魔力に集中する 「あ〜っ。あ〜」 口は全く動いてないが、たしかに喋れている 「やっぱり。雪だるまには口も耳もないし。魔力で喋れてるね」 「でも、器が変わって魔力が変異したからかテレパシーの声も変わってるね」 そしてユキはついに感謝を伝える 「その、ありがとうございます」 「満足してもらえてよかったよ」 科学者はそう言うと扉を開ける 「さぁ、ここから外に出れる。幸せを返しに行きな」 ユキはヒトの体に慣れていないため、少し動きづらかった 少し跳ねながら外に出たら、 ちょっと前まで地獄だった光景が輝いて見えた ユキはもう雪だるまじゃない ユキはたった1人のヒトになった ユキの新たな生はこうして始まった。 「でも、やっぱり暑いです…」 科学者は見送っている そして科学者は自室に戻る 「いやぁ、よかった。また間に合わなかったかもしれなかった」 「それに、トラウマのアレを有効活用できたってのも結果としては良かった…」 「ちょっと危機感持たなきゃな。もう二度と間に合わないなんてこと、起こしたくない」 「あれ?セレ、いつまで記録してるんだ?もう一件落着、でいいだろ?」 ```記録終了