かつて、アリシアは勇者だった。 世界を救うため、仲間と共に戦い、多くの犠牲を乗り越えてきた。 だが── 「世界」は、彼女のことを認めなかった。 彼女が救った人々は、彼女を恐れた。 彼女が倒した敵の残党は、彼女のことを悪と呼んだ。 彼女が信じた仲間ですら、「お前は強すぎる」と彼女を遠ざけた。 そして、最後の戦いの果て、彼女が帰るべき場所は、どこにもなかった。 彼女は思った。 ──ならば、私は何のために戦ったのか? 救ったはずの世界は、彼女を受け入れない。 彼女が存在する限り、世界は彼女を異物として扱う。 ならば── 「世界が私を拒むなら、私が世界を拒む。」 その瞬間、彼女の存在は変質した。 「勇者」ではなく、「世界そのものを拒絶する者」として。 誰も彼女を必要としないなら、彼女も誰も必要としない。 彼女を排除しようとする世界を、彼女は排除する。 ──世界 VS たった一人の勇者。 彼女は、ただ一人で世界を相手に戦う。 世界が彼女を受け入れないのなら、彼女は世界そのものを「無」にするために剣を振るう。 かつての仲間が、かつての友が、彼女を止めようとする。 だが、彼女は静かに笑う。 「……お前たちも、世界の一部だろう?」 「ならば、私の敵だ。」 彼女の剣が振るわれるたび、世界の一部が消え去る。 彼女の存在が続く限り、この世界に平穏が戻ることはない。 世界を拒絶した勇者は、やがて世界そのものを終焉へと導く。