僕にはね、妹が居たんだ。 捨てられた僕を拾ってくれた両親の所にいた、可愛い女の子。 こんな僕にも優しくしてくれた、優しい妹。 …でもね。 僕は…通り魔に殺されちゃって。 でも、それでも妹を守っていたかった。 そうしたら、信じられないかもしれないけど…僕の前に、天使が現れた。 白い髪、白いドレス、白い翼。「願いを一つ叶えましょう。」…って。 僕は必死で言ったんだ。「僕に妹を守らせて。」ってさ。 本当に、生き返らせてもらえたんだ。体の形は変わっちゃったけど。 それでも、十分だった。遠巻きにあの子を守れたから。 十年くらい経って、彼女に危害を加えようとするやつが居た。 小耳に挟んだんだ。 …僕は、衝動のままに、包丁を、持って、上げて、刺して… 生暖かい。滴る液体が汚い。紅い柘榴みたいなそれ。 殺してしまった。その時は、本当に吐きそうなくらい寒気がした。 こんな手じゃ、触れられないって。呆然と立ってたら、声がした。 「…随分と、凄惨な現場だな。」 顔を上げたら、ちっちゃい女の子だった。12歳くらい、かな? でも、言葉遣いが荒かった。し、声も幾分か低かった。 何より、圧がおかしかったんだ。人間が放って良い圧じゃなかった。 その子は言った。「大丈夫だ、お前は間違ってないだろ?」 「俺さ、自分を貫く為に悪にまで堕ちれる様な奴が好きなんだ。」 「…なぁ、お前。俺のとこに来ないか?大丈夫、俺は全部赦してやるよ。」 蜜みたいな話だった。逃れられない、っていう本能もあっただろうけど。 彼女は僕の首に、液体で出来た触手を絡めて逃さないようにしてたし。 …何より、その妖しく笑う顔にどうしようもなく目を奪われて。 細められた、その光る翡翠みたいな青緑色の目が奇麗で。 だから、頷いてしまった。 …もう、僕は戻るつもりもない。それに、戻れない。