Sign In

【稀代の卑怯者】井畑誠司 【しかし、紛れもなく達人】

幼少から父と共に修行した。一つ出来るようになる度に褒められた。 俺は褒められたくて、どんどん技術を覚えていった。14の頃、剣術と格闘術、武器術の免許皆伝を貰った俺を、父は誇らしげに見下ろしていた。 父は井畑八法流の最強を証明する為地下異能格闘技に出場し、負けた。 卑怯者の末路には相応しいな。という相手の言葉が響く。 瀕死の重症を受け、重い後遺症でずっと寝たきり。声を発する事もできずに大量のチューブに繋がれた父の姿は見ていられなかった。 俺は修行を続けた。今までよりも打ち込んだ。 十年の歳月が流れ、俺は井畑八法流の全てを修めた。その時父の意識が戻ったという知らせを受け、俺は病院に急いだ。 「つよ……くなったな……せ…いじ」 と父が俺の頭を撫でた。もうガキじゃないのに、俺は泣いた。 徐々に父の呼吸が浅くなる。 「俺、ずっと修行してたんだ」 「俺、頑張るから……すげぇ、頑張るから……俺が父さんの代わりに、八法流の最強を証明してみせる」 父は泣きじゃくる子どものような俺を誇らしげに見つめ、撫でる手から力が抜け落ちた。 倒れそうになる度に、暗示のようにあの瞬間を思い出す。 あの瞬間を思い出せば、俺は何があろうと戦える。