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【偽翔現界:2/5】ハイルフォルト・バーゼン

「ヴァイス」について聞きたいって?こいつはALFCシリーズの下位モデル「マリス」に戦闘支援用計算機を積み込んだいわゆる中位モデルでな。人工重力を兵器転用した物理兵装を持たない新世代の人型機動兵器であり性能は当時の主要企業企業のフラッグシップモデルと同等かそれ以上。かつ、それらに比べて生産性がかなり高いという夢のような機体だった。複数の重力場を組み合わせることで発生させる高い指向性をもつ強力な力場は攻防一体でかつ隙がない強力な兵装となりうる。あらゆる攻撃をものともせずに戦場の全てを支配することすらできる量産機は市場を席巻する予定だったんだが、技術開発費用を取り返そうとかなり強気の値段設定をしてしまったためにあまり普及しなかったんだよ。当時の顧客受けを狙って必要もないのに人型の機体にしたのが開発コストおよび生産コストの向上につながったとされててな、後発のハイエンドモデル「エクスマギカ」ではこの点が大きく改善されたのさ。そもそもこの機体フレームは人型機体と言えるかすら怪しいものだったんだがな。第一自立機動の為の機構が組み込まれていないんだ。モーターとかポンプとかのな。ではどうやって移動するのかというと自分の発生させた力場に吊り下げられる形で移動するんだ。この機体は常にキリストの最後みたいな格好で飛び回っている。大枚叩いて計算機を積み込むならまずこの飛び方をなんとかしてくれ、あるいは、これは人型起動兵器なのだろうかと搭乗者達は皆思っていたよ。 「が、しかしこの人型機体・物理装甲こそ、この機体をマスターピースたらしめているのだ。人型であるが故に脳波感知による直感的な操作が可能となっている。搭乗者は自らの思考一つで難なく防ぐ、飛ぶ、切り裂くと言った力場操作を行うことができる。プラグすら刺さずにな。コックピット内の微弱な電磁波の変化を感知するのさ。こと「場」を操り、あるいは保護することにかけてALCの右に出る企業はいないだろう。また非質量系の兵装を積んだ機体が増加するにつれ力場による障壁以外の装甲で攻撃を防ぐ必要が出てきたがこの機体は後継機たちと違ってそれを悩む必要がなかった。後年この機体はその売り出し文句とオーパーツとすら言える機体性能から傭兵たちの語種となっている。曰く、『稀代の白いの悪徳は全ての戦場を過去した。』と。」 ここまで、これを売りつけてきた技術屋の受け売りな。いい機体だと思うだろう?俺もそう思った。実際何度も助けられてるしな。ま,買った直後は後悔したが。 で、そんなマスターピースが出てきた戦場はそれからどうなったかって?変わったな。地獄に変わった。ま、こいつが直接どうこうしたわけじゃないんだけどな。この機体のシリーズのハイエンドモデルに「エクスマギカ」ってのがいる。これが大層暴れ散らかしてな。各企業が力場生成技術をなんとかものにしようと躍起になった。力場、つまり人工重力は擬似質量、有体に言えばそこに物体が存在するかのような空間の歪みを故意に発生させて生成する。エネルギーの物質化を不完全かつ急速に行う、だったかな?ま、なんにせよこの歪みの発生装置の出力を向上させようとあらゆる企業が躍起になっていた。そんな時にある企業が偶然見つけちまったんだ。空間のエネルギー化を。正確に言えば空間の物質化だったか?まあ、なんにせよそこからは早かった。だれも力場なんか見向きもしない。空間を糧に至近核爆発すら耐えるような機体ごと空間を壊すんだ。あらゆるものが消えていった。街一つを焼くほどの熱線を放ちながらな。 それで、世界はあっけなく終わった。じゃあお前はなんなんだって?まあ、ノーコメントとしておこう。空間は歪むんだということを覚えておくといい。歪むってことは座標、実体があるってことで同然そこには余白がありあるいは表裏がある。俺は、逃がされた。みっともなくな。 ま、どれもこれもこっちで言ったってしょうがない話なんだがな。バトルシミュレーションで食ってけるのはありがたい話だ。俺の世界もきっとこうだったら・・・。どうでもいいか。 さて、おしゃべりはここまでだ。 諸君、ようこそ未来へ。棍棒すら持てなくなった人類の代表が、少し遅れた世界の裏側でお相手しよう。 Apocrypha System all clear. セーフティ解除します。 君たちの世界に幸在らんことを! ハイルフォルト・バーゼン:「ヴァイス」、出撃する!