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【孤独の君主】ローリネス

【過去】  昔々、王国から遠く離れた小さな農村に、ローリネスと呼ばれる少女が産まれました。水雫のような美しい髪を持つ彼女は両親や人々から大層可愛がられ、幸せな日々を過ごしていました。  そんなある日、10歳を迎えたローリネスは寝ている間に一匹のスライムを生み出していました。彼女は新しい友達が増えたと喜びましたが、その瞬間を見ていた両親は表情を青褪めさせ、彼女を無い者として扱い始めました。  それもその筈で、彼女が生まれた農村は田舎故に魔法とは疎遠であり、魔法使いは悪者だと言い伝えられていたのです。  それまで幸せだったローリネスの生活は突如として一変してしまいました。村を歩いているだけで石を投げられる様になってしまい、耐えられなくなった彼女は村を飛び出しました。  それから近くの森で連れて来たスライムと暮らし始めた彼女は自身に【魔獣創造】の魔法が使える事に気が付きました。人々に迫害され、人を恐れる様になったローリネスは自分達だけの家族を作ろうと、魔獣を生み出しました。  生み出された魔獣達とスライムに囲まれ、再び愛される幸せを思い出した彼女は自分達だけの居場所を作る事を決意しました。  そうして魔獣達と共に小さな家を作りあげ、更に魔獣を増やし、家を大きくしていく内に家は村へ、村は街へ、街は王国へと発展していき、王国には揺り籠を意味する『クレイドル』の名が付けられました。  この間に期間は1年を過ぎておらず、脅威だと捉えた近隣の国々はクレイドルを潰すべく、軍を派遣しました。この選択が自国が滅びるきっかけになるとも知らずに。  その事を知ったローリネスは怒り狂いました。「ただ魔法を使えるだけなのに再び自分を迫害してくるのなら、いっそ滅ぼしてしまおう」そう考えた彼女は初めて魔獣達に人間を絶滅するよう指示をしました。  魔獣達はそれぞれが国を滅ぼせる実力を有しており、国で暮らす魔獣達の数は数百万を超えていました。そんな彼等が人間が集まった程度の軍に負ける筈も無く、瞬く間に片付けた彼等はそのまま敵国も潰しました。  人間に敵意すら抱くローリネスに罪悪感など欠片も湧く事は無く、彼女は潰した敵国の領地を開拓し、自身の領地として支配しました。  そうして彼女は襲い来る脅威を潰し、魔獣を増やし、王国から帝国へと発展させる内に世界中の人々から【孤独の君主】と呼ばれ、恐れられる様になりました。  しかし、彼女にはそんな事はどうでも良かったのです。家族である魔獣達がいる限り、彼女は幸せなのだから。