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【「不死」の転移者】ハジメ

本名、一 一 (にのまえ はじめ)  とある町のゲームセンター。押し潰れそうな程の観客が見守る中、アーケードゲームの仄暗い明かりに男の顔は照らされていた。  彼は「イレヴン」と呼ばれるクォーターの青年。半年前からこのゲームセンターのアーケードゲームにドハマりし、遂に今日この時、地元のチャンピオンとの一騎打ちの真っ只中なのだ。  きめ細かなビット数で、限られた動きの中で、両者、アバターとなる格闘家が熾烈なバトルを画面の中で繰り広げている。  周りの声援も、やかましい隣のUFOキャッチャーの音も、館内の放送も、そして向かいのアーケードゲーム機からの怒号にも似た声援も、青年の耳には届かなかった。  イレヴンは、この瞬間が堪らなく好きだった。   そして、その時が来た。ゲーム機から勝利のファンファーレの間の抜けた音に次いで、地響きのような歓声がゲームセンター内で鳴り響いた。  勝者はイレヴンだった。   勝利の余韻に浸りつつ、考え事に耽りながら帰路に着いてたその時だ。  ふと、横を向いた。  状況を理解するのに右からの音の正体を理解するべきだったからだ。  気がつくと辺りは赤のライトが点滅していた。続けて視界に情報が入ってくる。 コンクリートに付けられた曲がったタイヤ痕 慌てふためく人々、こちらを不安そうに見る人々 千切れて街路樹にぶら下がる誰かの左腕 煙をあげ、火花を散らす大型トラック  …そんなものはどうでも良くなる程、青年の身体は重く、沈む感覚があった。せめてもう一試合、やりたかったなぁ、そう思いながら瞼を重さに任せて閉じた       【G A M E O V E R】 Do You Want To Continue ?        ▶︎YES NO  目が覚めると見知らぬ路地裏だった。何が起こったのか分からぬ青年は、左腕が無いことに気付いた。  しかし、次の瞬間、傷口はじゅくじゅくと音を立て塞がり左腕のみならず、身体からはすっかりと傷が何一つ無くなってしまった。青年はふらりと立ち上がり、ポツリと呟きながらゆっくりと歩き始めた。 「勿論、YESだ。」 その顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。 「今の俺には、無限の残機がある!ランクマッチと洒落込もうじゃねえか!」 CV:戸谷 菊之介 90人目〜!異世界転移者4人目! モチーフは今流行りのローグライクRPGのキャラクターですね。やばいくらいハマってますわ。