宇宙空間が眩い光に満たされると同時に座薬の頭上に最高神が現れた。 俯いていた顔を静かに上げると、黄金の光を纏った純白の6枚の翼が展開され、光の柱が降り注ぐ。 神を異常に嫌う座薬は、瞬時に神殺しの猛毒を搭載した大量の小型ボラギノールJrを最高神目掛けて一気に発射する。 しかし、座薬の攻撃が最高神の元に到達する前に、最高神が放つ凄まじい後光によって大量の小型ボラギノールJrは無力化され次々と消滅していく。 その衝撃的な光景とあまりの力の差に座薬は一瞬の焦りを見せるも、すぐに自身の置かれた状況を理解し「核帝勝訴」を放つための形態に即時変形する。 その時、最高神が閉じていた瞳を僅かに開くと、周囲の空間が急激に歪み座薬の頭部が瞬時に捻じ切れる。 一瞬の出来事に困惑する座薬の首から数十万と小型ボラギノールJrが吹き出し、その巨大な機体が揺らぐ。そして、最高神は座薬の脳内(?)に直接語りかける。 『何故壊す』 脳は持たないが、座薬の機体中に奇妙な声が響き渡り、内部の情報処理装置が破壊される。 その声に抗いながらも必死に体勢を立て直そうともがき、圧倒的不利な状況でも怯む事なく逆転を狙うその目は、確かに最高神を的確に捉え睨みつけた。 『何故壊す』 座薬が活動するためのあらゆるシステムが停止し、思考が回らなくなっていく。今まで感じた事のないような、遠い昔に一度だけ感じたような、とてつもない「恐怖」という名の感情が座薬を支配する。 座薬を見下ろし、最高神が一際眩い光を放った、座薬が全てを覚悟したその瞬間。 確かにそこに存在していたはずの最高神の姿は、初めから何もなかったかのように目の前から消えていた。 座薬から吹き出し続ける大量の小型ボラギノールJrが宇宙空間を覆い尽くす。 座薬は困惑すると同時に、強烈な支配から逃れたかのような感覚に安堵のため息をつく。 機体の損傷が激しく、どこかへ飛んで行った頭部を諦めて着陸できそうな惑星を探そうと座薬はなんとか思考を巡らせる。 その時、ふと座薬は違和感を感じた。 凄まじい光の束が背後から座薬を貫き、座薬のシステム全てを司る最も重要なコアが一瞬で破壊された。 「……………………???」 一瞬で砕け散ったコアを中心に座薬の機体は一気に崩壊し、あちこちから血のように小型ボラギノールJrが凄まじい勢いで噴出する。 気配など何もない。なかった。はずだ。 状況を理解する間もなく、座薬の機体を形成していた未知の素材やパーツが破片となって飛び散り、宇宙の塵と化していく。 制御を失った小型ボラギノールJrの大群が銀河を狂い飛び回り、次々と墜落し消滅していった。 いつ造られたのか、どこから現れたのか。それすら不明。 「宇宙の大罪」とも呼ばれ、長きに渡りその存在をあらゆる銀河に知らしめ、破壊の限りを尽くし宇宙を震撼させた極悪非道な座薬型破壊兵器… それが今、宇宙ゴミへと成り果て星屑の如く滅び消えゆくその様子を、最高神は憐れむような、蔑むような、光に覆われよく見えない変わらぬ表情で、静かに見守った。