【プロファイル】 かつてクレス・ノストルは、小企業製の重装型機体「パープル」に搭乗していた。 その企業は優れた技術を持ちながらも、小規模ゆえに大企業の圧力に晒されていた。 ある日、護衛任務中にとある大企業の襲撃部隊―― 「フランカー」による奇襲を受ける。 激戦の末、パープルはコックピットを貫かれ、大破。 護衛対象だった小企業も壊滅的な打撃を受ける。 命からがら脱出したクレスは、施設奥に残されていた企業の試作防衛目標のもとへ向かう。 そこには、瀕死の状態で待っていた一人のメカニックがいた。 血まみれのメカニックは、最後の力を振り絞り、 緊急セッティングを施しつつ、かすれた声でこう言った。 「お前は...あぁ...小僧か……俺はもう…ダメだ……」 「抗え……最後まで…」 彼は、その言葉を遺して静かに崩れ落ちた。 クレスは震える手でセンチネルのコックピットへと滑り込む。 剥き出しの未完成の配線。 硝煙と鉄の香り。 幼い頃に何度も忍び込んだリューゼン特有の無骨なコクピット。 無数の警告灯が赤く瞬く中、再起動スイッチに手を伸ばした。 ――カチッ。 《EMERGENCY SYSTEM OVERRIDE》 《強制起動プロトコル発動》 【パワーセル接続…異常:未認証】 【ジェネレーター起動失敗…再試行中】 【システムモジュール強制起動…待機中】 ――ズォォォォンッ!! 外からの激しい衝撃音。 必死に応戦する職人達の怒号。 展示用の機体を無理やり動かし、応戦するも火力の差は圧倒的。 工具と機械が散らばる格納庫で、ボディが不安定に軋む。 冷却システムが部分的に動作し、無数の警告が飛び交う。 【アクチュエータ出力調整失敗…再調整中】 【センサーシステム…未調整】 【武装認証…部分的に稼働】 【リンクデータ取得失敗…再接続試行中】 【メインバイタルスキャン…エラー】 モニターに大量のエラーが流れ続ける。 数秒ごとに、異常な音と共に強制的に画面が切り替わる。 【RSF-9 起動シーケンス:緊急対応モード】 【システム状態:不完全起動】 エラー音が鳴り響く中、中央モニターが切り替わる。 【SYSTEM NAME:???】 【STATUS:ALL SYSTEMS INCOMPLETE】 頭部のカメラが点灯、しかし視界は不安定でわずかな乱れを見せる。 【カメラ不安定】 【ジャイロ調整失敗】 外で爆風が吹き荒れる中、フランカーが次の標的を探している。 クレスの手は震え、必死にコントロールを試みる。 ――動いてくれ。 手を伸ばして調整を加えるクレス。 その中でシステムはやっと応答を返す。 だが、全てが安定しているわけではない。 【WELCOME HOME. OUR SON.】 一つのモニターがゆっくりと切り替わる。 同時に胸部ジェネレーターが静かな音を上げて作動を始める。 膝をついた機体がゆっくりと立ち上がる。 その動きはどこかぎこちなく、ボディ全体が震える。 【OUR LAST DREAMDEDICATED TO OUR SON.】 不完全な状態で、だが確かに、最後の夢は動き出す 頭部のカメラが低い唸りを上げ、薄暗い施設内に淡い光を灯した。 外では施設が崩れ、火の手が周囲を包む。 恐らく此処に生存者はいないのであろう。 その向こうで、フランカーが次なる標的へ武器を向けていた。 ――守るため ――抗うため クレスはスロットルを握りしめ、叫ぶようにを前へ踏み出させた。 【STATUS:ALL GREEN】 今度こそ、自らの意志で運命を切り開くために。 【SYSTEM ONLINE:REY-SENTINEL】 ■ 名称 汎用試作大型機動兵器 「RSF-09R レイ・センチネル」 ■ 開発元 リューゼン鉄工所(Ryusen Ironworks) 【アセンブル構成】 ■ フレーム 頭部:RS-HF9 胴部:RS-CF9 腕部:RS-AF9 脚部:RS-LF9 内部機構:RS-I00R(耐久・チャージ特化型) ■ 武装 □右腕:ハイブリッドライフル「アステリオン・リヴァイヴ」(RSW-R01R) 左腕:エネルギーパイルバンカー《パルスヴァンガード・ブレイカー》 右肩:マルチプルビット「レイヴンシャドウ」(RSW-SR01) 左肩:3連高速グレネード「ブレイズランチャー」(RSW-SL01) 【リューゼン鉄工所】 ■ 創業者 榊(さかき)龍前 バルド・ノストル 戦時中は軍需工場の技術者 → 戦後、独立 ■ 所在地 元・中規模都市郊外 現在は廃墟地帯に存在 ■ 得意分野 小型~中型フレーム設計・製造 高耐久ジェネレーター開発 手作業による精密仕上げ ■ 社風 「数より質」を信条とする完璧主義技術者集団 ■ 技術の特徴 異常な耐久性(オーバースペック気味) 出力安定型ジェネレーター(ただし起動が重い) センサー系統は普通レベル(メカ特化) ■ 現代の評価 「動けば無敵」「扱いづらい遺物」と呼ばれる伝説的な存在。未発見パーツは高額取引される 【リューゼンの最後】 大企業資本による一括契約、大量生産化の波に飲まれ、次第に仕事が減少。 新世代に受け継ぐ間もなく、職人たちは離散。残ったのはわずかな技術者と、未完のプロジェクトだけ。 そんな中、彼らが最後に目指したのは 「圧倒的な装甲(数倍の装甲厚)」 「液体金属カートリッジによる装甲、フレーム自己修復」 「無尽蔵のエネルギー供給」 「洗練された防御・反撃システム」 による生存性に特化した「至高の守護者」。 だが、資金・パーツ・技術の限界により未完成に終わる。 試作フレームのみが遺され、完成には至らなかった。 ■ センチネル 「RSF-09 レイ・センチネル」は、その夢の途中で残された試作フレームに一部装甲を取り付けた形態。 本来はさらに改良を重ね「RSF-10 レイ・トリヴァリス」へ進化予定だった。 ――未完成ながら異様な頑丈さと、折れない芯を持った機体。 「壊れても、何度でも立ち上がる」ために作られた存在。 不完全なまま、それでも彼らは歩き出す。 かつて彼らが夢見た、"至高の守護者"をその背に乗せて。