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“血鎌” ヴァンプ・ニコラス

冒険家であったヴァンプ・ニコラスは、新大陸の奥地でとある花を見つける。 後に“鉄血蘭”と呼ばれるその花は、現地では“鬼呼びの花”と呼ばれる花だった。 宝石のような美しい紅い花に価値を見出した彼は、現地民が止める中、花を持ち帰る。 それは周囲からの蔑むような重圧の視線を、見返す為の行動だった。 しかしそれが、悲劇の始まりだった。 花には未知の病原体が付着しており、長い間花に接していた彼は、帰りの船でその病原体に感染してしまう。 未知の病気に侵されてしまった彼は、「感染の危険がある」として隔離され、三日三晩苦しみ悶え、そして死した。 船内は悲しみに暮れ、遺体は棺に入れられ海へと流された。 しかし、彼は死んではいなかった。 高熱で仮死状態へとなっていた彼は、海の真ん中で目が覚める。 肌は死体のように青白く、犬歯は鋭くなり、目は赤く染り… 彼は、“吸血鬼”となったのだ。 「なんで、私だけがこんな目に…?」 一人孤独に死に、仲間に捨てられ、焼け付く太陽が肌を焼く海上で、彼は自らの不幸を呪う。 そして、気付いた。 “不幸”とは、“幸運”があるから“不幸”なのだと。 全人類が同じ“不幸”になれば、それは“不幸”ではなくなると。 自分一人ではなくなると。 彼は月夜の照らす海岸を、人を求めて彷徨い歩く。 自分が不幸じゃなくなる為に。 一人ぼっちじゃなくなる為に。