Sign In

【南の冠姫】メリ・ディアナ

私が赤ちゃんの頃だったの。 その頃、お母さんはすごくひどい人だった。いつもお父さんを殴ってた。 お父さんはずっとニコニコしてたけど、でもいつも苦しそうで。 私は、赤ちゃんだったけど...それでも、ずっと心配だった。 ...ある時...いつだったかは覚えてないけど、私はまだちっちゃかった。...はず。 お母さんが居たの。ゆりかごの中の、私の前に。金槌を持ってた。 私の前にいて、金槌を大きく振り上げてた。私は怖くて目を瞑った。泣いた。 その時に、ぱあんって。大きな音がなったの。お母さんの頭に穴が空いてた。 血だらけになった。お母さんの血で、私がべちゃべちゃになった。 ちょっとして、銃を持ったお父さんが駆け寄ってきた。 それで、私は直感的にわかったの。 「お母さんは、もういなくなった」って。 ううん、別に悲しんでるわけじゃないの。むしろ、お父さんが私のために...って。 そこまでしてくれて...すっごく嬉しかった。 だけど、だけどね。怖いの。夜が怖い。 あの日から、毎晩、毎晩...お母さんが恐ろしい形相で私に金槌を振り下ろしてくる。 ...そんな夢を見るの。 お父さんも、それからずっと苦しそうで。 すごく怖い。でも、私に酷いことする人はきっとお父さんがやっつけてくれる! お父さんは、私の自慢の、世界一優しくて素晴らしいお父さんだ、ってわかるから! 大好きだよ、お父さん!                       ────みなみのかんむり座の日記 全てを忘れたふりなんてしないでよ、水くさいなあ。 君は私とおんなじ、そして君のお父さんともおんなじ。穢れてるんだよ。 少なくとも、今の君は図らずも自分の手を血に染めてしまっているからね。 代々、彼の血族はその恐ろしい能力があったもの。 君は純潔には二度となれない。 ...ねえ。君のお父さんに刃が振り下ろされそうになったとき、君はどうした? あー...うん、質問を変えようか。 君は自分がどんなに忌むべき能力を持っているか、分かっているのかい?                              ───製作者