【手を伸ばす夢】 俺様の人生、たかが19年しか生きてないがそれはもう色々あった。 スラム街出身の俺様はかなり貧しかった。その日食える食いもんすらまともにないくらいにはな、そんなスラムで俺様は親父と2人で暮らしてた。 お袋は俺様を産んだ日にそのまま逝っちまったらしくて親父と俺様の2人だけだった。 それでも俺様の親父は文字通り身を粉にして俺様を育ててくれたさ。 朝早くから仕事に行って日付が変わってしばらくした時間に帰ってきたり、丸々3日帰ってこなく帰ってきた時にボロボロになってたりするのは日常茶飯事だった。 そのせいか親父は俺様が6ぐれぇの時に雇ってる奴からの暴力や過労、食いもんを俺様に与えてたせいでぶっ倒れちまった。 寝たきりになった親父の代わりに俺様が働いたんだ。 まぁガキ1人が稼げる量なんてたかが知れてるから物好きな趣味わりぃ貴族に媚び売ったり限りなく黒寄りのグレーな事をしたりした。 そんな時、親父が俺様に言ったんだ 『何処までも堕ちてもいい、地獄に落ちる卑怯なことをしてもいい、ただ誇りは忘れるな。』 ってな、その日から俺様は変わったさ。 あんな趣味わりぃ貴族にお願い助けてって弱気になってしっぽ振るぐらいなら親父がこんな事になる原因を作ったクソみてぇな奴からぶんどってやろうってな。 俺様が義賊になったのはその日からだ。力を付けてスラムの数少ない友人を集めて義賊団を作って、汚ぇ貴族や私腹を肥やす成金共からだけぶんどってスラムの奴らに分ける義賊 食料確保や護送船を襲撃するために海賊になって海練り歩きながら漁業もしたさ。 海賊やってる内に怪物に遭遇することもあった。 退路の無い海のど真ん中で出会った怪物、初期から居た仲間は問題はなかったが何人も仲間が殺られちまったし俺様も頭にデケェ攻撃を喰らっちまった。 仲間の死を無駄にしたくなかった、ここで逃げたらまた振り出しになる、マイナスに戻ってしまう。そう考えたら逃げられなかった。 次に気がついたらその怪物をぶちのめしてスラムの為の金になってもらったさ。 そしたら一気に色んな奴らが押し寄せてきてスラムは一気に発展して行ったさ。やれ怪物を討ち取りし町だのやれ勇者のいる町だの好き放題言いやがって。確かこん時が15か6の時だ。 それを気に食わなかった奴らも現れるわでてんやわんやしてたさ。楽しかったがな。 俺様が18になったぐれぇの時か。初期の仲間達は各々の道を見つけて進んでいった。もちろん俺様の所に残った奴も居たがな。 そんな時だ。俺様達を気に食わなんだ貴族や他国の奴らが儀式で海神を呼びやがったんだ。目的地はここ、元スラム街。俺様はその海神をぶちのめす為に海に出たさ。 荒れ狂う海、悪天候の空。そんな中海神は出てきやがった。 見ただけで身の毛もよだつような恐怖を感じる見た目、冒涜的な見た目の眷属共。実力のある仲間以外は即座に発狂しちまう程だった。 俺様も足が竦む、ただ動けない訳ではない。だが発狂した仲間をどうすれば、と考えて動けなかった。 そんな時残った仲間が言った、ただ一言頷いて 『任せろ』 その一言のおかげで俺様は戦えた。眷属や発狂した仲間を他の仲間に任せ海神を叩いた。 荒れ狂う海上での戦い。硬ぇ外皮に苦戦し、海を操る能力に翻弄されなかなかダメージを与えれなかった。 1呼吸しようとした一瞬、コンマ単位のほんの一瞬に海神は攻撃し俺様はデケェ一撃を貰っちまった。 瀕死の重体。その一撃を喰らった瞬間、俺様はあの世を見た。 親父は元気でお袋は生きてる。仲間も良き親友として居る貧しくない世界。 だがそれがまやかしだって気づくのに時間はかからなかった。なんてったってお袋が喋らなかったからだ。 俺様はこんなまやかしに屈しはしない。そう思った瞬間世界は砕けた。 夢の終わるその瞬間、聞こえてきた知らない声 『行ってきなさい、ゾイ』 俺様の目が覚め、最初に見た光景は死屍累々だった。ボロボロの船に生きてるのか怪しい親友達、海神はその光景を見せつけてきやがった。 だが俺様に迷いはなかった その後は早かった 仲間は誰もついて来れない程の激戦から一方的な蹂躙 攻めるだけの戦いが護るために戦う俺様に勝てる訳もなく、その海神すらぶちのめしたのさ。 海神をぶちのめしてから色々手に入って平和になった同時に失ったものもあった。 あまりに大きなものを失った俺様の心は満たされなかった。飢えていた。 俺様はもっとかき集めてやるさ。 それが何処までも沈む沼地であっても ここにいる全員が笑って過ごせる日を作るために俺様は絶対に集めてやるさ。 他者を見る時の見ている景色 見ている向きが変わる時 飢えはきっと満たされる ちなみに常にしたわれるように振舞っているが、実はトマトとにんじんが食べれなかったりする