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【鬼才の道化師】エンジー・レイヴ

かつて、いや今もその名を知らない者は居ないほどのマジシャン だが、マジシャンを続ける理由は単純な理由だった「彼を笑わせたい」 その彼についてはレイヴだけが知るワケがある レイヴは昔、貧困な村で産まれ育った、母には愛情を注がれてきたが酒癖の悪い父は嫌いだった暴力、暴言…思い出すだけでも嫌になるほどだった そんな彼女にも癒しがあった それは近所の人がしてくれる「マジック」 それが彼女の人生の始まりだったと言える 彼女はマジックを見て笑った、人生で1番笑った そして夢ができた「人々を笑わせるマジシャンになる」と そこからマジックを猛特訓した、3年後彼女はとあるサーカス団に勧誘され入った サーカス団に入ってから彼女のマジックは素晴らしく「鬼才」と評価された しかしどんだけ上手くなっても観客席は全員は笑顔にならない ただ1人だけしょぼくれた顔をしている男の子がいた レイヴはその彼が気になり終演後話を聞いてみた 名前はアンドレイと言うらしい 「君はどうしてそんな悲しい顔をしてるんだい?」 「僕は…病気で長くは生きられないんだ…だから…笑ってもしょうがない」 「…」 レイヴは決意した 彼を絶対笑わせてみせると そこからというものレイヴは終演後、毎回アンドレイの前でマジックを披露した でもアンドレイはなかなか笑ってくれない それでもレイヴはマジックを続けた だが…彼も日に日に弱っていった なかなかサーカスにも来れなくなっていた そんなある日久々にやってきた レイヴは喜んだ、そして前みたいに終演後、アンドレイにマジックをした 「この帽子から君が今欲しいものを出してあげるよ」 「欲しいもの?」 「それ!」 出てきたのは茶色いクマのぬいぐるみだ 彼にぬいぐるみを手渡した時 「わぁ…!」 笑った…ついに笑ったのだ! 幸せそうな笑顔だった 「ありがとう!お姉ちゃん!」 レイヴは不思議だった こんなに人を笑わせてきたのになんで今更こんなに嬉しいのだろうと アンドレイはそっとレイヴを抱きしめ帰って行った そしてアンドレイは来なくなった 病気が進行して亡くなってしまったらしい レイヴは悲しんだ もう一度だけ笑わせてあげたかったと 悲しんでるレイヴに一通の手紙が渡された 宛先はなんとアンドレイからだ 手紙を読んでみると 「お姉ちゃんへ ぼくをたのしませてくれてありがとう 病気と言われた時すっごい不安だったけど毎回毎回お姉ちゃんがマジックしてくれるおかげで楽しかった もう会えないと思うけどお姉ちゃんはお姉ちゃんでがんばってね! 僕はサーカス団の中で1番お姉ちゃんが好き! アンドレイより」 レイヴは幸せだった 彼はずっと笑っていたのだと知って もう1枚クレヨンで書いたレイヴとアンドレイの絵がある 「大好き」と言う言葉も書いてある レイヴはこれからもアンドレイのことを笑わせることに決めた レイヴは天国か地獄にいるアンドレイのため、今日もマジックをするのであった