「星の力」は……元を辿れば優衣ちゃんのものだ。 けれど、それをこの世界に持ってきたのは、「神」なんだそうだ。神が己の怠慢で優衣ちゃんの力を元の世界に還元することもなく、勝手に別の世界へと押し付けた。その結果が「星」の誕生と厄ナナシによる人死に、優衣ちゃんの家で起きた惨劇だ。 私もその被害者といえる。1度でなく2度も厄ナナシへと堕ち、さらに今私は自らの意思でもう一度厄ナナシに堕ちようとしている。 もし、この人類の受けた苦しみを返す先があるのならば…私は全て返しつけてやりたい。私たちの受けた悲しみ、苦しみ、痛み、怒りを。全部。 「覚悟してくださいね。私達が居ないと存在意義すら無くなる…哀れで愚かな羽虫さん。」 私は下界に降りてきたらしい下級天使という存在に「ごん」を変質させた刃を向け、睨みつける。 その天使は怒りと憎悪で顔が歪んでいるが、私がその憎たらしい顔を蹴り飛ばすと、地震のような音ともに、その歪んだ顔すらも見えないぐらいに、天使の顔が物理的に歪んだ。 実に愉快だ、と私は思った。 その天使の頭を突き刺して息の根を完全に止め、私はその体から、天使が奪い取っていた「星」を取り込む。 身体が強烈な違和感を覚えながらも、私は歩く。天使が来る場所に向かって。川を昇るように、根源へと歩みを進めていく。 _____________ 身体はひび割れ、「ごん」が消え去った。それの代償として、私の背中から無数の触手が生え始めた。 私のアホ毛と同じように…無意識、私の感情の赴くままに勝手に動く。それが指す方向へ向かえば天使が必ずいる。私はそれを殺し、さらに取り込み力をつける。 気づけば私は天界へたどり着いていた。いつの間にか手元にあった光り輝く剣も赤く染まり、その滴る血液で光が覆われ、その光も見えなくなっている。私の触手も血を振り払うために激しく動き続けている。 その動きに巻き込まれるように、天界に住む矮小な羽虫が切断されて弾け飛ぶ。そして私は、遠いところに見える宮殿のような場所へ歩みを進めていく。 _目的地はもう見つけた。 あとは全ての元凶を屈服させ、この力を抹消させる…もしくは、神ごと天界に住む全ての存在を抹殺するかだ。