嘘の月明かりの下で…… 小雨や霧雨がずっと降り続いている台地の大森林…の下にある谷の国出身の魔法使い。 幼なじみの青年からプレゼントとして、硝子花の髪飾りを貰って身に付けている。 しかし、それは青年の手から渡されたものではなかった。 青年に依頼されて硝子花を共に探し、髪飾りを作った飾り屋の魔法使いから、青年の代わりに届けに来たのだ。 しかし青年は硝子花を森へ取りに行ったきり、帰ってこないのだ。 彼女は未だ見習いで慣れない魔法「探し物の魔法」を無理をして使ってまで探したものの、見つからなかった。 そうだ、硝子花の花言葉には純粋な心への敬愛の他に、亡霊からの贈り物という意味がある。 そう、この不可解な出来事はすぐに解決した。 常に水浸しの台地、少しの勾配でも土砂崩れなどすぐに起こる。 飾り屋の魔法使いによって、土砂に埋もれた遺体は発見された。 探し物の魔法は、その魔法の使用者が探す対象の前提条件を与えて発動させる。 ………… 彼女には、耐えられなかっただろう。 そこへ悪魔狩りの1人がやってきた。 「青年のことは残念だ」 悪魔狩りは、国が警戒するほどに、国が討伐という害獣と同然に扱うような厄介な人物の集まりだ。だが、同情しかしない周りの人間と比べたら、今の彼女にとっては自身の暗い感情へ手を差し伸べてきた聖人のようにも見えたのかもしれない。 一体何を言われ、提示されたのかは分からない。 しかし、普通の人が悪魔狩りになる事など容易いのだ。他者を攻撃するだけで自身の存在意義が保証されるのだから。 彼女はたった2週間で変わった。 元々の才能だったか、悪魔狩りの教祖から力を授かったのか。 前者だと信じたいがな。 教祖に腕を買われたのか知らないが、悪魔狩りの中でも位が高いとされている「執行者」の立場に居るらしい。 悪魔狩りを辞めた人間に対して手続きを図る役職だ。 そこまで身を落とせばもう引き揚げることはできない。 お前が愛し、お前を愛した青年は、どんな顔をしてお前を見る? 君は硝子みたいだ、すぐに割れて、曇って、君が見えなくなっていく。 すまない、そして…さようなら。 「私は、悪魔狩り執行者 イーラス・メルマ。硝子に映されたお前の悪魔を狩る者。」