《 あらすじ 》 「すごいマン」は「幸田奏」「ブチコーム大佐」と共に本拠地の存在する地球へと向かう。 彼らの目的地「静止軌道ステーション」へ上り、蒼い星を見つめた彼らに、招集命令が下る...... _________ 「次の作戦目標はヘリアだ。」 「星渡りを最初に駆り出す作戦がこれとは......」 「狂気に近いものを感じますわ。」 彼らの表情が曇った。 「指令上、俺たちは別行動になるな......。」 「あんたには俺の知ってる星渡を教えておくぜ。」 「困ったらそいつを頼ってくれ。信頼できる奴だ。」 そういって彼はデータを渡す。 そこにはガスマスクをつけた大男の写真と、「トロボンチーノ」という名前がつづられていた...... ...... 視点は奏に移り変わる。 ブチコーム、すごいマンと別れた奏はとある場所へと向かった...... ...... そこは、多くの石碑の立っている場所だった。 軌道宇宙ステーションの下、日に照らされた草原。 大きな複数の石碑が乱雑に並ぶ中に、ひときわ大きな石碑が立っている。 僅かに刻まれた文字は、すべてが名前だった。 話では、ここに同じ場所に向かう星渡がいるらしいが...... 裏側に回り込むと、小柄な女性が立っていた。 彼女はこちらを見ることなく、黙々と石碑に向かい続けている。 「あんたがキヴィ・モノリスだな?」 「なんだ......その......服装は......」 「これは前職の名残です。お気になさらず。」 「それで、あなたが奏様ですね。」 振り返った彼女のまなざしはあまりにも凛としていた。 「次の作戦の準備はできております。」 「貴方はどうでしょうか。」 「勿論、俺もできてるぜ。」 「ところであんた、ここで何をしてたんだ?」 彼女は再び石碑へと目線を向ける。 静かに伸びた指先が、彫られた名前をなぞる。 「石碑を、読んでいました。」 指先は繊細に文字を負い続ける 「奏様は、世界崩壊で戦ったのですよね。」 確かに俺は、あの世界崩壊の日に、空の上で戦った。 死を見た地上の人々は俺たちに希望を託して......死んでいった。 あれからもう1000年が経とうとしている。 かつて世界崩壊を導いたB粒子、「バンダースナッチ」は今や星海渡りの根幹技術となり、新人類の文明をけん引している。 「あの時は......さすがの俺でも怖かったぜ。」 俺は星海渡りを起動しながら答える。 「青かった星が真っ赤に染まって......」 「......そう、ですか。」 彼女は石碑から目を離さなかった。 その目線はいくつもの名前をずっと追い続けている。 石碑は一つだけではない。 世界崩壊では100億が死んだ。 だからこそ、その石碑は遠く、向こうまで不規則に続いている。 「作戦開始時刻だ。行こうぜ。」 「わかりました、奏様。」 ...... ヨトゥンの星は醜かった。 焼け焦げた地表、常に赤い空。 無数の鉄くず...... よく考えれば、あの世界崩壊も似たようなものだったかもしれない。 あの戦いを超える異形の量。 それを追撃する「異形の人類」。 この戦争は、本当に...... 「奏様、あなたは......」 「この終わらない戦いに、意味があると思いますか?」 キヴィは敵を突き飛ばしながら語り掛ける。 「俺には言い切れない。」 「これは、俺たちだけの戦いじゃないからな。」 この戦いは、ただの戦争ではない。 経済的利益を得るためでも、異教を潰すためでもない。 だが......それなら、この戦争の本当の意味は...... 「本丸、来るぞ!臨戦態勢だ!」