___その森には、とある言い伝えがある。 "人狼"、そう呼ばれる存在が森に迷い込んだ子供を襲って食べてしまうのだと……。 これは、とある少年が体験した物語。 人狼、そんな存在と遭遇した過去を記した物語。 「おー人間か!、人間なんだな!」 ___ニカッ、人狼は気さくに笑いかける。 「で…、でたぁぁあ〜〜〜ッ!!」 ___少年は逃げ出した。 【⏳少し前の出来事⌛️】 ___あまり遠くに行くな、親の忠告が少年の脳内を駆け巡った。 「ここ…、どこ…?」 ___少年は周囲を見渡す、知らない土地にいた。 「……………?」 単なる薪拾いのつもりが、どうやら遠くに行き過ぎてしまったらしい。しかし、戻ろうにも肝心の進むべき方角が分からないのだ。 「ど、どうしよ……?」 ___ガサガサ…! 「ふぇっ!、なに…!?」 森の物影が音を立てる、少年は身構えた。 ___ヒョコ…! 何かが顔を出した。獣の耳、獣の毛皮、そして人間の顔である。間違いない"人狼"だ! 「おー人間か!、人間なんだな!」 ___ニカッ、人狼は気さくに笑いかけた。 少年の顔は青ざめる。 「で、でたぁぁあ〜〜〜ッ!!!」 少年は、その場から一目散に逃げ出した。 ___ハァ……ハァ…、ハァ… 「ほ、ほんとに人狼はいたんだ!、大人たちの話はほんとうだったんだ!」 ___ふと、真横を見る。 「よんだ…?」 人狼が、ケロッとした様子で近くに座っていた。 「う…、うわぁぁあ〜〜〜ッ!!!」 ___少年は再び逃げ出した。 人狼の声…、 「待て〜!、少年〜!」 「ついてこないで〜ッ!!」 「その先は危険だよ〜!」 「へっ………??」 ___スカ…!、スカ……!、 少年は足元を確かめる、地面の感覚がない。それもその筈、地面から遠のいた崖の向こう、少年は落下した。 「うわぁ〜っ!!」 ___ガシッ…! なんと間一髪、人狼が咄嗟に伸ばした手で少年を掴まえたのである。 「あ…、ありがと……」 あとは少年を引き上げるだけであった。しかし、それに反して人狼の表情が辛そうである。 ___グラッ…! 「お、おもい……!」 「えっ…!、待って!、もう少し頑張ってよ!」 「む、ムリ〜…!」 ___ズルッ! 「「うぎゃあぁぁ〜〜〜っ!!!」」 人狼と少年、二人仲良く崖の底へと落ちていった。 ___二人は谷底に流れる川に落ちた。 「プハッ……!」 少年は自力で岸に上がった。 「さ、寒い…!」 少年の震えた声、ところで人狼は…?? 「うぎゃ〜!、たすけて〜!」 ___バシャバシャ…! なんと、人狼は泳げない様子であった。 「うそォーー!?」 ___少年は再び冷たい川へと飛び込んだ。 「たすかった〜!」 人狼が焚き火で暖を取りながら呟いた。すると、遠くから少年が追加の薪を拾ってくる。 「ハァ……、なんか疲れた…」 ___ドサッ 少年も焚き火の近くに座り込む。 今日は森で迷ったり、人狼に遭遇したり、崖から落下したりと本当に運がない日である。 ___ぐぅ〜…! 「お腹すいた……」 少年は空腹に腹を押さえた___。 ___すると、 「たべる…?」 人狼が何かを差し出す、よく見ると人狼の口元は真っ赤である。 「ち、血ぃ……ッ!?」 少年は直立に飛び起きる。 しかし、人狼は首を横に振った。 「ちがうよ、木の実だよ?」 赤いベリー、人狼はムシャムシャと食べている。 「なんだ……、ビックリしたぁ」 少年は木の実を受け取った。 「あっ、思ってたよりおいしい!」 ___その後、少年の腹は満たされた。 ___さて、 「どうやって帰ろう…??」 少年にとって一番大事なこと、それは無事に家に辿り着く事である。 ___人狼は名乗りを上げた。 「えっへん、私に任せなさい!」 「ほ、ほんと…!、じゃあお願いするよ!」 少年と人狼、二人は出発した。 ___1時間後 「あれ…?、ここ前にも通ったよね……??」 「あれ、そうだっけ…?」 ___2時間後 「ねぇ!、絶対ここ通った事あるよね…!?」 「んぅ〜、気のせいじゃないかな?」 ___3時間後 「ここ!、やっぱり通った事あるよ!」 「あれ〜?、おかしいな〜……?」 ___ ___ ___ ___ ___8時間後 「もお!、正直に言ってよ!」 「うん、迷った!」 人狼は頭を掻きながら笑った。 「ウソでしょ!」 「てへっ!」 「てへっ!、……じゃないよ!」 少年は激怒した。 「まっ!、どうにかなるでしょ!」 それに反して人狼は楽観的であった。 ___もう、陽が沈む。 「さ、寒い……」 真夜中の森は冷える、少年の体温を容赦なく削いだ。 ___すると、、、 「ふにゅ〜!」 人狼が抱きついて温めようとする。 「…………ありがと…」 少年はお礼を述べた。 ___んっ……?? まだ日は明けない、そんな時間帯に少年は目を覚ました。 「ぐすっ……、グスッ…」 眠っている人狼、そんな彼女が泣いていた。なにか悪夢でも見ているのだろうか? 「ぱぱぁ…、ままぁ……」 両親を呼ぶ声、そういえば今日一日を過ごしてみて人狼に家族がいる様子はなかった、そんな風に少年は今日という日を振り返った。 「…………。」 少年は、静かに考え込む。 ___ついに、 「見えた…!」 村を見つけた。 少年は上機嫌に歩き出す。 それに反して、人狼は立ち止まっていた。 「おわかれ…、だね」 人狼は、そのまま立ち去ろうとした。 「待って…!」 少年は、彼女を引き止めた。 「良かったら、一緒に来ない?」 「へっ………??」 人狼は呆気に取られた様子で少年を見つめる。 「いや……、君が良かったらの話だk…((」 ___ギユッ…! 人狼に抱きつかれた、あたたかい。 「い、いいの!」 ___人狼の尻尾が高速で揺れていた。 「ふふっ、もちろんだよ…!」 少年と人狼、二人は手を取り合った。 ___ところが………! 「「うぎゃあぁぁ〜〜〜っ!!!、クマ〜!」」 なんと熊に襲われたのである。 「食べられる!、喰い殺されちゃうよ〜!」 少年は涙目で走っていた。 ___もう村は目の前である。 「お父さん〜ッッ!、ヘルプミー!?」 すると、村の人々が集まってきた。 「大変じゃ!、少年と人狼がクマに追われとる!」 「なんだって!?、少年と人狼が…!」 「大変!、少年と人狼が…!」 「マジかよ、少年と人狼が…!」 「そうじゃ!、少年と……」 ___えっ…、人狼……?? 一瞬、村人たちの脳内にハテナが浮かぶ。 ___村人のコンビネーションアタックにより、熊は即座に撃退された。 「た、助かったぁ〜」 少年は安堵のため息をつく。 「ところで、そちらの人狼さんは……?」 村人の視線が、少年の背中に隠れる人狼に集まった。 「わ…、私はわるい人狼じゃないよ!、ほんとだよ!」 ___人狼は怖がりつつ、そう呟いた。 すると……、 「なんだ、悪い人狼じゃないのか!」 「よかった、俺の家から猟銃を待って来なくて済んだよ」 「まぁ、可愛らしい毛皮…!」 「ね!ね!、私たちと一緒に遊ぼうよ!」 村人たちの反応は意外にも良好であった。 そして、この中で一番驚いているのは人狼本人であったに違いない。 ___人狼、これから始まる村での生活。それはきっと、彼女にとって驚きに満ちた生活になる事であろう。 だから、どうか彼女に眩いばかりの幸福が続く事を願って、この物語を静かに閉じる事としたのだ。 「ふふっ……、、、」 そうして、少年は自身の書いた日記を静かに閉じたのである。 ___ヒョコ… 「……んっ?、なんか書いてるの??」 人狼が顔を覗かせる。 「うわっ…!?、なな…なんでもないよ!」 「む〜、怪しい?」 人狼は呟く。 「えー、じゃあ……それ見せて?」 ___ドキンッ…! 「い、いや〜………そのぉ……」 ___ダッ…! 「あっ、逃げた!、待て〜!」 人狼と少年、二人の物語はまだまだ続きそうである。 [完。]