Sign In

〈無銘の剣客〉天星

遥か昔の地球に、ある事件が起きた。月に巨大な隕石が衝突して、月の砕けた破片が地球へ飛び散ったのだ。この大災害のおかげで、人は大量に死滅し、文明は大きく後退した。 大災害からかなりの時間が流れ、文明が元のレベルに戻りつつある時、ある鉱夫が奇妙なことを発見した。 一部の地域に点在している謎の大岩の中に、金属質の物質があったのだった。 これを聞いたある刀鍛冶は、謎の金属質を加工し、刀として完成させたいという衝動に駆られた。 一つの岩からごく少量しか採れない金属質を、刀鍛冶は財産をはたいて大量に手に入れた。 未知の金属質は地球にある鉄とほぼ変わりない性質を持っていたため、その刀を作ること自体は刀鍛冶にとっていつも通りの作業だった。しばらくして、刀鍛冶は難なくその刀を完成させることができた。 しかし、そこで刀にあってはいけない問題が起きたのだ。 その刀の刃をいくら研ぎ澄ましても、何も切ることができなかったのだ。 刀鍛冶はこれについて酷く落ち込み、この刀のことを忘れることを願い、遠くの地のある寺院に収めて、刀鍛冶はこの刀を手放したのだった。 それからまた、長い年月が経ち… ある青年が、山奥にある荒廃した寺院に足を踏み入れた。 彼は、住んでいた村の人々から気持ち悪がられていた。そして、18になる日に村から追放され、何も持たずに森を彷徨っていたのだ。 何か売れそうなものはないか。食料はないか。彼は、じっくりと寺院の亡骸を漁っていた。 ふと、彼は布に厳重に包まれた何かを見つける。紐を解き、布を開封する。 それは、手入れもされていないはずなのに、刀身は輝き、柄は美しい五芒星の模様を保った、一振りの環刀だった。 彼はその刀に見惚れ、そのまま硬直していた。 しばらくして、彼はなんとなく、その刀に語りかけてみたた。 彼は、生まれつき物が持つ微弱な意思を汲み取り、物に己の意思を吹き込む特異な力を持っていた。それ故に、村から追放されたのだが。 刀は応える。 叶えたい願いを言え、と。 幼いころから村で孤独に生きていた彼は、何も分からなかった。ただ、生き延びる術だけを覚えさせられ、それだけで生きてきた。 彼は、己の人生の意味を願った。 刀は、また応える。 願いを叶える勇気はあるのか、と。 彼は、ただ応えた。 彼は何も持っていない。己の人生の意味を知ろうとして、それで傷ついたとしても、何も持たぬまま果てるよりかは良い。切実にそう思ったからだ。 刀は、それ以上なにも語らなかった。 ただ、力にならんとばかりに、その環刀 ───「堕星」は、月明かりに照らされ輝いた。 ただ流れ星に願ったところで、流れ星が願いを叶えるわけではない。 流れ星が流れ、そして潰えるまでの一瞬のときの中でも、願いが叶うことを想い続けることが重要なのだ。