神など然程信じちゃいなかったからね、 教会にいても信仰心は育たなかったよ。 勇者となり、女神様の意思を垣間見た今も 結局 僕にソレが芽生えることはなかった。 ……縋れば腹の足しになる分、世の中的には 無いより有る方がずっとマシだとは理解するけど。 そんな僕と聖女たる君は正反対の人間だと、 昔はそう思っていた。 女神が宣う通り、善く在れと胸に誓ったとて、 実際にそう在り続けられる人が この世の中に一体どれだけいるというのか。 君は善く在ることを女神の教えへの恭順だと言うが その実、君自身が強く望んでそう在ることを 今の僕は知っている。 教えに順じて救われたいのではない。 救う口実として体よく教えを唱えている。 結局そうやって信仰より理想に順じる君こそが 善く在り続け、女神の意思を体現するというのは 何たる痛快な皮肉か。 女神様には悪いけどさ、僕はこの 下手くそで生意気な嘘をつく幼馴染みの 頑張り続ける姿の中にこそ、神を見出だしたんだ。 僕は、彼女が笑顔で生きていけるように、 そのためだけに世界を救うことにするよ。 「貴方はそれで良いのです。 ただ……どうか愛する者のことを見失わないで」