___【自爆コード:à la carte】 ___承認、、、。 今まさに彼女、いや……その恐るべき兵器が俺を殺そうと鋼鉄の皮膚に覆い隠された"死"を剥き出しにする。 「___自爆。」 ___コンコン…、、、 誰かが日曜日の朝にドアをノックする。 普通の独身サラリーマンにとっての休日は貴重だ、そんな貴重な朝の惰眠タイムを邪魔するのは誰だ……。 俺、田中熊五郎(たなか くまごろう)は眠い目を擦りながら玄関のドアを開く。 ___女性がいた、それも美人である。 「えと…、どちら様?」 「ミスター・田中クマゴロウ氏でお間違いないでしょうか?」 「え、俺…?、まぁ……そうだけど、、、?」 どうやって知ったのか、俺の名前を口にした女性。俺は不思議がって首を傾げる。 だがしかし、金融から借金はしてないし、ちゃんと某放送局への視聴料は払っているつもりだ。 まさか___ッ!!、新手の宗教勧誘なのでは! 「すまんが、俺は[生涯タバコ吸い続ける教]に入ってるから勧誘なら他に行ってく……」 「いえ、そうではなく」 女性は否定する。 そして、、、 ___ギュ…! いきなり女に抱きつかれた、俺は美人に抱かれるまでに出世したのか!? 「えっ、ちょ……何?、何なんですか?」 ___カチッ 「自爆許可を申請」 ___【自爆コード:à la carte】 ___承認、、、。 女が告げた言葉、力強……ッ! 「これより、自ば…」 ___バッ…! 女の身体を強引に引き剥がす、そして押し倒すように女を玄関から共用通路へと突き倒した。 ___ガチャン! 「な、なんだよ!アレ!」 俺は息を荒く呼吸しながら閉じた玄関の戸に背中から滑り落ちていく。一体、アレは___? ___コンコン… 「うおっ!(ビクッ」 「田中さま、開けて下さい田中さま」 女は無機質な声で何度も戸を叩く。その淡々とした声が尚更、俺の彼女に対する恐怖心を高まらせた。 「な、何なんだよ!」 「開けてください田中さま、貴方にはご両親からの殺害命令が下されています。」 「はっ!?、両親___ッ!!」 もっとワケが分からない状況、俺は玄関先で頭を抱えた。 「く、くそ……何がどうなって…」 ふとノック音が止まった事に気づき、玄関で耳を澄ませてみる。さらには玄関の覗き穴からも確かめてみた。するとどうか、先程まで居たはずの女が消えていた。 「は…、ははは……、ようやく諦めたか」 俺は額からの汗を拭った。 ___ガシャアァァァァン……ッ!!! 「へっ……??」 リビングの方からの物音、見てみると窓を叩き割って外から先程の女が這い出るように侵入してきたのである。 「うぎゃあああああああ!!?」 俺は驚きすぎて腰が抜けた。 「田中さま、先程ぶりですね田中さま」 そして、女が機械的な表情を浮かべて玄関でへたり込んでいる俺へと近づいて来る。 「ま、待て! とりあえず一旦待って!」 「何か問題でも、田中さま?」 女が小首を傾げた。 ___問題しかないのだが!? いや、しかし……ここは一旦落ち着いて、俺は本題を切り出した。 「お、お前さ! さっき両親からの命令がどうとか言ってたよな!?」 「ええ、言いました。」 「あー、話の腰を折るようで悪いが! 俺の両親は3年前に二人とも死んでるんだよ!」 ___沈黙が走った。 女は呟く。 「error、不明な障害が発生。とりあえず自爆します。」 女が再び自爆を実行しようとする。 ___いや、何がなんでもバーサーカーすぎるだろ! 「ま、待て!、とりあえず一旦落ち着け!」 「承知、一時的に自爆モードを解除」 彼女はこちらを見ながら停止する。 「まぁ……なんだ、とりあえず状況を説明してくれないか?」 俺はとりあえず、女から話を聞く事にした。 硝子の破片が飛び散った畳間の上、俺と女がテーブル越しに互いを見合うようにして座っていた。 「でっ、お前は何者なんだ?」 少しの沈黙の後、 「私は少女型軍用地雷式アンドロイド、通称"アラカルト"と呼ばれるアンドロイド兵器の試作機とされています。」 「兵器…??、なんでそんな物騒なもんに俺が狙われてるんだよ?」 「田中さまのご両親、つまりは実地試作テストにおける最初の顧客からの要望に従い、私は此処へ派遣されました。」 俺はお茶を啜りながら彼女の話を聞いていた。 「ちょい待ち、その顧客って誰だよ?」 「残念ながら、本機には顧客の個人情報に関する詳しいデータはインストールされておりません。」 「じゃあ、ターゲット情報でも何でもいいから知ってる分の情報を聞かせろ」 「承知しました、これより資料を印刷します。」 ___バサッ 突然、女は上着を脱ぎ始めたかと思うと、腹部から次々に印刷された資料の束をまとめて男に手渡した。 「えーと、ターゲット情報は……」 見ると、確かに名前は同じ"田中熊五郎"だ。しかし、顔がどう見たって俺じゃない!? 「おい!、これって別人!、やっぱり俺じゃないぞ!」 女、改めてアラカルトは答えた。 「え、そうなんですか?」 「はぁ〜、このポンコツ兵器が……」 まさかのターゲットは同姓同名の別人であったのだ。 アラカルトは深く頭を下げた。 「今回の一件、田中さまに多大なるご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」 「いやいや!、もういいって……」 謝罪の言葉こそ業務的な機械音声ではあるが、今回の厄介事から早く離れられるならば儲け物という奴である。 「それに、ロボットのお前も大変だな」 なんとなく空気を和やかにしようと会話を試みる。 「いえ、これも私達に課せられた存在義務の一部ですから……」 ___んっ、私達……? 「って、いう事は他にも似たような奴がいるのか?」 「はい、私は量産を目的に生産されたプロトタイプですから」 「ふぅん、量産ねぇ……」 こんな美人さんが実は大量殺戮兵器だとは誰も予想できないだろう。 それに___、 「なぁ、お前はなんか夢とかあるのか?」 「夢…、ですか…?」 アラカルト、彼女は考える。 「ターゲットを、爆殺する事でしょうか?」 「違ぇよ、それはお前に与えられた役割であって!、お前自身のものじゃないだろ?」 アラカルトは深く考え込む。 「分かりません、私には理解できない概念です。」 俺は、少しため息を吐く。 「そうか……」 ___ただ、 「私の意識構造体の中で、この機体が壊れるという事に対する一種の躊躇い、拒絶反応のような不明なバグが見られます。」 ___それは…… 「死にたくねぇ、って事じゃねぇの?」 俺は呟いた。 ___すると、 「そうなのでしょうか?、私に搭載された人工知能の出力では到底理解の及ばない話ですね。」 「まぁ、とりあえず人間の俺としては無駄に死ぬ事はないし、自分の勝手自由に生きてこそが人間だとは思うがな」 俺は、そう言って頭を掻いた。 ___すると、 「先程の話を参照すると、田中さまは私という単一の存在を人間という定義に当て嵌めて捉えているように解釈できるのですが……」 「いや…、だって美人だし、話は通じるし、見た目は人間だし、もう人間って事でよくねぇ?」 「なるほど、面白い意見ですね。」 そう呟いた彼女、アラカルトの表情は相も変わらず無表情ではあるのだが、なんだか今この瞬間だけは彼女の表情が笑っているように感じられたのだ。 「それでは、私はこれで失礼させていただきます。」 そう言って、彼女は立ち上がった。 「そうか、元気でな」 ___ところが、彼女…… 「あ、そういえば……」 ___んっ??? ふとした彼女の声、そんなアラカルトの反応に俺はなんだか嫌な予感がして冷や汗をダラダラと流し始めた。 「___これより機密情報の漏洩に対する緊急自爆を敢行します!」 「は、はァ……ッッ!!!」 ちょっ、待っ……! しかし、もう遅いッ!? ___【自爆コード:à la carte】 ___承認、、、。 今まさに彼女、いや……その恐るべき鋼鉄兵器が俺を殺そうと鋼の皮膚の奥底に覆い隠された"死そのもの"を剥き出しにする。 「___自爆。」 ドガァアアアアンッ!!! 理不尽な爆発が周囲を吹き飛ばす。 【〜数週間後〜】 俺はぎこちなく松葉杖を突きながら、どうにか自宅へと帰ってきた。 ___新しい、もはや新築同然のアパートの前に着いた俺と、もう一人……。 「おお、随分と新しくなりましたね。」 爆発の原因ことポンコツ兵器"アラカルト"、彼女が隣に立っていた。 「って、なんでお前がココにいんだよ!」 ___すると、 「何を隠そう、このボディは試作改良されたばかりの新型モデル。つまり、私は[アラカルトVer2.]とも呼ぶべき存在なのです。」 彼女は、ふふん…と鼻を鳴らして自慢げに笑った。 「あ、いや……そういう事じゃなくてだな」 もはや、ツッコミを入れるのも疲れてきたな。 「こほんっ、田中さま……あなたは私を人間として扱った最初の人間です。なので、私が人間としての生活が送れるまで、きちんと面倒を見る義務があるのではないかと思うのです。」 「なっ、そんなデタラメな理論が通じるか!、それにお前は軍用アンドロイドだろ!、管理してる奴らはどうしたんだよ!?」 「ええ、実はこっそり脱走してきました。(ニッ」 ___ブイ!、彼女は誇らしげにピースサイン✌️を掲げた。 「ハァ〜、まじかよ…」 「ご安心ください、爆発の威力は前回の反省を活かして倍の威力に改良されております。」 「いや、全然安心できねぇよ! ってか、勝手に人の家に住む前提で話すなよ!」 「むぅー、それでは仕方がありませんね。」 ___【自爆コード:à la carte】 ___承n 「わー!わー!わー!、ストップ!ストップ!」 「承知しました、自爆モードを停止します。」 ___くっ、このポンコツ兵器が…! 「聞こえてますよ?」 「チッ、しゃあない……少しの間だけだからな!」 「ふふっ、そう機械のように冷たい事を言わないで下さい。人間ならば、どうか温かい言葉で私を歓迎してくださいね」 そう言って、アラカルトは小さく微笑んだ。 そして、これが俺と彼女の忌々しくも始まった物語の序盤、そんなドタバタな二人のスタート地点を描いた物語。 人間とアンドロイド、それら両者に違いはあるのだろうか? 仮に両者に違いがあるとしたならば、俺は即刻にでもコイツを廃棄処分にしてやるからな! 「ふふっ、聞こえてますよ?」 「えっ!、マジかよ…っ!?」 そんな二人の騒がしい日々はまだまだ続いていく事だろう。 [完。]