「わ、私の事を……捨てるんですね!あの女と付き合ってれば満足なんでしょう!?もういいです!」 魔力で形作られたナイフを持った少女が叫ぶ。眼の前の、左耳を失った犬耳の少女に向けて。異世界転移の術に使われる刃を見つめつつも、呆然とした表情で返答する。 「な、何だよエルシィ……そんな事言うな、オレら友達だろ……?」 「『友達』!?今まで、片耳を切り落とされた貴女を支えてきたのは誰だと思っているんですか?片耳を切り落としたのは誰だと思っているんですか?まさかそんな暴力女と上手くいくと思っているんですか!?」 犬耳の少女の反論を押しつぶすかの如く、激情を解き放ったエルシィ。目に涙を浮かべながらも、自身の首にナイフを当てる。後は自らの生命を断つ様に切れば、新たな世界へと転移してしまうだろう。 「……キスまでしたのに!」 「だからってそんな事していいわけ無いだろ!?◼️◼️◼️◼️様に会えばエルシィも分かるはずだ、オレ達の本当の関係が!」 「『様』、ですって!?そんな不健全な関係、認めません!今すぐ、私の目の前で別れてください!」 エルシィの腕に力が籠もる。返事次第では文字通り消える、そんな意思を伝えるかの如く。 「……今のアンタとは、付き合える気がしねぇ。悪ぃな」 だが、かの少女の返答は冷たい。その一言と共に去っていく後ろ姿を見つめるエルシィは、 「お願い、見捨てないで……ください!」 と最後の一言を叫ぶが、何も返ってこない。只々去っていくだけの後ろ姿が、虚しく映る。 もう見棄てられた、そんな意識がエルシィを苛む。 そして彼女は自らの首を断つ。激痛とともに身体が消えていく。最も、今の彼女にとってはこれが――新たな、裏切るような女がいない世界への転移が――一番の望みなのだ。 ーーー 烈風さんごめんなさい。そして素敵なログをありがとうございます