宵闇の戦場-- 冷たい灰のような空... その下を地を滑るように動く... 《フェイズラプソ》 「まだ遅い...もっと...」 密閉された神経接続コクピットの中でユンは思考を加速する。 事故によって四肢感覚を失い、生身の感覚を捨てた彼女は、自ら設計した神経接続デバイスによって今、肉体ではなく信号で機体として動く。 そして今、戦場は彼女にとってひとつのステージ... 《戦闘演習を行いますか?》 「戦闘じゃなくて、演舞...でしょ?」 《...そうですね》 敵は3機、いずれも重量級。 だが、彼女の舞は断絶された時間の狭間に棲む。 敵のセンサーがユンを捕らえる時には既にその視界に残像しか残っていない。 「跳ねて、崩して、刈り取る...リズムに乗って。」 呼吸も汗もないが、脳裏にある"躍動" それで彼女はその動きをしていた。 「私は、リズムを刻む指揮者よ...」 演習終了、記録保存ー否、彼女は全ての戦闘記録データを消去した。 -舞はその瞬間にだけ、意味を持つから-