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【終えた先の孤独は命を穿つ】今無き大国の王女

      なにもないよ         ありがとう    愛されたことを知れただけでも    私は十分だった 「なぁ、見なさい我が娘よ」 「こんな所に不死の花だ」 「飾っておくとしよう」 「不死の花は枯れることなくその花を咲かし続ける」 「食べると不老不死になるとか……なんてな」   そうだ       そうだね        私が悪いのにさ   だめだ  うーん    だめだ 「お父様、あの人々は何をしているのですか?」 「うーん、そうだね、くだらないことさ」 「くだらないこと?」 「お金欲しさにおかしくなってしまったのさ……もっと、良い策を考えねば」 「お金が無くなるとどうなってしまうのですか?」 「飢えてしまう」 「それを私は許せん」 「どうするのですか、お父様」 「今から考えるのだ」   今考えても     あれは優しさだったね    ごめんね 「どういうことか、説明したまえ!!」 「暴れないでください国王様!!」 「こんな……こんな事信用できるか!?我が娘が、最近の国民の貧困の原因とでもいうのか!?」 「ですが……そうとしか」 「黙れこのヤブ医者!!クソ……クソ!!」 「…………」    聞こえてたよ、お父様      愛ある故、今なら分かる  でも、あの時は怖かった 「ほうら、アイリー……君の玉座だよ」 「豪華ですね、お父様」 「そうだろうそうだろう……もう、心配は要らないさ……」 「王様、また門の前でならず者が」 「……またか」    苦しかったよね       辛かったよね      今なら痛いくらい分かる 「……すまないなアイリー」 「お父様……?」 「タイムリミットみたいだ……」 「…………」    あの時、頭が真っ白になった    何が起きたのか理解できなかった   したくもなかった 「本日のお食事でございます、王女様?」 「……うん」    美味しかった  でも本当に     吐き気がする 「おい、不死の花が無いぞ!!王様が死後も厳重に守れと命令なさっただろう!!」 「不死の花など知らない!!俺は立場的にも行けないぞ!!」    お手伝いさん、敵だったよ   突然お花摘み取るから何かと思ったけど    混ぜてたんだよね 「助けてくれ!!人攫いのゴブリンだ!!」 「やめてくれ!!俺の子供を持っていかないでくれ!!」 「助けて!!助けて!!」 「俺の家が……家がぁ!!」 「私もういや!!」 「殺される……殺される……」 「おじいちゃん!!おじいちゃん!!返事してよぉ!!」 「おかぁちゃん、起きて、起きて」    丁度良く、荒っぽいモンスター      きっと全部私が招いた 「くだらないものは?」 「全部なくなりました、王女様」 「貴方はどうなるの?」 「私もじきでしょう」 「……一人は怖いよ」 「貴方は生き続けてください」 「なんで」 「ひとりで?」 「ひとりぼっちで?」 「なんでよ」 「ねぇ」 「なんで」 「なんで?」 「ねぇ……」 「なんでさ……」 「途中で死んじゃうかなぁ……」    私は好きだった     人々の、国民の、      くだらない言動が    くだらなくても    それは確かに美しくて、愛らしかった 「王女様、この勇者メイデルセンが助けに参りました……!!」 「なんで来ちゃったの?」 「え……助けるために……」 「望んでないよそんなの」 「……?」 「誰が君をここに送ったのかは知らないけど、怒らなきゃ」 「……招待状もなしに」 「す、すみませんでした……」 「連れてくだけ、連れてってよ」 後日、勇者はドロドロの生命体に変貌し、挙句死亡した    沢山、洋服を手に入れた      謁見の間が服屋みたいに    でも、着せ替える人形ももういない       お父様のくれた綺麗だったもの   黒くて      糸みたいで        からからな    ティアラと   守り抜いた、父の物とはかなり見劣りする玉座   自死も、他殺もされない私 私の人生に"くだらない感動"を神は与えなかったんだ