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《凍獄の魔人》クロース

十災禍は、各共同体に対する 理不尽な抑止力として存在する。 我々を害せば、殺す。 害さずとも、殺す。 干渉すれば殺す。 視線を交わすだけでも殺す。 妙な企みをすれば殺す。 企んでいるように見えたら殺す。 媚びれば殺す。 歯向かっても殺す。 余所見の許されぬ、 最悪の「災害」として。 我々は為政者達の思考の片隅に居座り、 その采配を咎めるよう警鐘を鳴らし続けねばならない。 ……だというのに、当代の十災禍ときたら 「腑抜け」ばかりが集まりおった。 能力だけ見れば、寧ろ歴代でも指折りの実力者揃いだが その精神性は貧弱、軟弱、惰弱の揃い踏みときた。 その癖、奴ら 私の言葉は頑として聞き入れぬ。 「そりゃ御師匠様が頭の固い クソジジィだから、じゃないのかね?」 「……問題児筆頭はどちらも貴様の教え子だぞ、 責任を取れ馬鹿弟子」 「時代を牽引する世代が交代したということだろう? 諦めて静観したまえよ」 「ふん、400越えのババアが時代を語るなど ……笑い話にもならんな」 「経験を積んだとて、老いさらばえたつもりはないよ 君と違ってね」 「抜かせ、小娘が」