ディエゴ・ゼラフィムは、かつて辺境の小国に生まれた一人の少年だった。 種族は『賢人』。生まれながらに高い知性と記憶力、理解力を備えた希少な知的種族である。 彼は幼少よりあらゆる書を読み漁り、わずか数年で数千年分の知識を蓄えていた。 やがて、彼は自らを進化させ、『賢者』となる。 『賢者』は知の極致にある存在であり、世界中のあらゆる理と情報を記録・解釈・言語化できる能力を持つ。 しかし、それゆえに『賢者』は世界の設計上、進化の終着点とされ、『王』への進化は不可能とされていた。 だがディエゴは、その定義に疑問を抱くようになる。 なぜこの世界のすべては「記されている」だけなのか？ なぜ「知られていないもの」が存在しないと、誰が言えるのか？ 彼は図書館や遺跡、死海文書、世界中の禁書を巡り歩き、ついには発見する。 この世界のシステムに「存在しない」とされた、たった一行の欠けた情報を。 その瞬間、彼の脳裏に“声”が届いた。 「貴方の叡智は、我らの想定を超えた。進化を許可する。」 ディエゴの思考はさらに加速する。 それは世界そのものと同調し、システムと調和する形で進化が始まる瞬間であった。 世界の誰しもが悟った。 新たな『王』が生まれたのだと。 それも、本来は有り得ぬ異端な『王』が。 その時、ディエゴは知った。 自らの叡智が「未知」そのものを知る力となり、システムがそれを「受け入れた」のだ。