昨日の話なんだけどよ 仕掛けた罠を確認しようと森の中を歩いてたら猫の鳴き声が聞こえたんだ 『にゃー』ってね それで近くに猫がいるのかもって立ち止まって周りを見渡したんだよ 俺はそこでようやく森の異変に気づいたのさ 森の中だってのに鳥の鳴き声一つ聞こえやしないんだ 昼間なのにだぜ? 明らかに森で何か良くないことが起こってる そんなこんなで急に怖くなってきた俺は走って村に帰ろうとしたんだ そしたらまた聞こえたんだよ 『にゃー』って しかも今度は一度だけじゃない 何度もだ それも四方八方から聞こえてくる 俺は全力で村に向かって走ったね 多分人生で一番速かったと思うくらいには そんで村に着いて一先ず安心した俺は森の方へ振り返っちまったのさ あれほど後悔することはきっとこの先死ぬまでないだろうぜ だって森の奥から無数の金色の瞳がこっちを見てたんだ 心臓が止まるかと思ったね 暫く腰を抜かして硬直してたらだんだんと瞳が消えていって最後に一度だけ『にゃー』って聞こえたと思ったら、まるで夢だったみたいに何も残さず消えていったんだ まあ、あの森ん中で猫なんざ見かけた事ねぇんだけどな 俺も気づかないうちに疲れが溜まってたのかもしれねぇ あんたも気を付けなよ、旅人さん 俺の話せる奇妙な話なんてこれぐらいだが、暇つぶしくらいにはなったか? こんな何も無い村で良ければゆっくりしていってくれ! とある村の青年の話 ーーー 〈追記事項〉 数日後に情報提供者は自身の猟銃で頭を撃ち抜き自殺した 〈報告者〉 怪異対策機関イギリス支部 情報統括局 第三十二班所属 C級調査員[該当職員死亡により削除] 〈総評〉 秘匿度:- 危険度:- 影響度:- カテゴリー:『F(異常無し)』 〈調査報告書〉 猫が居ました。 以上で報告を終了します。 [当該案件に関する以降の調査計画は全て凍結されました]